つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
六次の隔たり(友人を6人たどると世界がつながる)と三次の影響(友人の友人の友人にまで影響力は及ぶ)が、社会的ネットワークのかなり普遍的な動作原理であることを再認識させられる本。ソーシャルネットワーク研究の一般書では、現時点での決定版といってよさそうな濃い内容。
社会的ネットワークは、情報だけでなく笑いの感情、幸福感、孤独感、性行動、離婚、健康、自殺、肥満、喫煙、禁煙、投票、病原菌など驚くほど多くのものを伝播させる系であることが明かされる。
テーマによって伝播の条件が違うのが面白い。
たとえば肥満は伝播するのだが、同性の友人が太っているときに特に自分も太りやすくなる。禁煙は教育レベルの高い人が禁煙すると周りもやめる率が高くなる。男性の健康は結婚できそうな女性の見つかりやすさに影響される。選挙では一人が投票すると、その人につながった3人が影響されて投票に行く。近接して住む人が幸福だと自分も幸福になりやすい。孤独を感じている人は友人を失いやすい。
三次の影響範囲と時間によって影響が消失することも重要なポイントだ。何事も無限に広がっていくわけではない。
「私たちの研究によれば直近の六か月に一人の友人が幸福になると、人の幸福度は45%上昇するようだ。一方、直近の一年間に友人が幸福になった場合、その効果は35%にすぎないうえ、時が経てばそれも消えてしまう。要するに、友人の幸福は人に影響を及ぼすが、その影響は一年間しか持たないのだ。宝くじの当選者が新たに手にした富に慣れてしまうように、私たちは友人の幸福になれてしまうのである。」
私たちはあらゆる面でソーシャルネットワークに影響を受けて暮らしていることがわかる。そして類は友を呼ぶ。幸せになりたいのであれば、幸せな人たちにつながるのが得策のようだ。人脈の広げ方、自分の生き方を再考させられる話が多い本だ。
つながりは増やせばいいというものではないことがわかる。
リアルと同じようにバーチャルなコミュニケーションにおいても伝播が確認されている。ツイッターやSNSが、情報だけでなく感情や心理も伝播させるネットワークとなっているのだとすれば、その潜在的な力は計り知れないものがあることになる。安易にフォローやリンクをする前に、この本を読んで、自分に与える影響をよく考えた方がいいのかもしれない。
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