茨木のり子集 言の葉I
詩人 茨木のり子の自選作品集全3巻が文庫化された。この第一巻には1950~60年代の詩、エッセイ、ラジオドラマ、童話、民話、評伝が収録されている。詩が書かれた背景を知ることができて、主な作品をだいたい読んだことがあるファンでも面白い(まあ、ファンしか買わないような本ではあるけれど)。
「第一詩集を出した頃」と「櫂小史」は24歳で詩を書きはじめて、27歳で川崎洋とともに同人誌「櫂」を立ち上げたころの回想エッセイだ。谷川俊太郎、岸田 衿子、川崎洋、吉野弘、大岡信など日本の現代詩の大物が登場する。
1950年~60年代ということもあって戦争による喪失をテーマにした作品も多い。「はたちが敗戦」の年齢。教科書に掲載されて有名になった「私が一番きれいだったとき」や「根府川の海」(最近の新聞でも取り上げられていた)が書かれたのがこの時期。茨木の凛とした態度は反戦詩に向いている。中国人強制連行体験者の実話をもとにした超長編詩「りゅうりぇんれんの物語」はドラマティック。他に「私のカメラ」「あほらしい唄」のような、らしくない甘い恋愛詩や、日本書紀の野見宿禰を題材にしたラジオドラマ「埴輪」、評伝「山之口 獏」など収録作品はバリエーションに富んでいる。
個人的には教育ということの本質を突いた詩「こどもたち」がベスト。「悪童たち」の「やさしい言葉で人を征服するのは なんてむつかしく しんどい仕事だろう」にもしびれた。
第2巻は1970年代~80年代。第3巻は90年代以降の作品を扱う。時代とともに作風がどう変わっていったか楽しみ。
・思索の淵にて―詩と哲学のデュオ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-398.html
・詩のこころを読む
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/06/post-406.html
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 茨木のり子集 言の葉I
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2984