ドラッカー名著集1 経営者の条件
ドラッカーの名著『経営者の条件』(原著1964年出版)の最新訳。英語の原題は「The Effective Exective」である。経営者の条件と訳されているが、『できるエグゼクティブ』の本である。ドラッカーは上司に命じられたこと以上の仕事をする人はすべてエグゼクティブであると言っている。狭義の経営者よりも読者層は広い。
名言、名文が満載の本だが、マイベストのセンテンスを並べてみる。
ひとつめはドラッカーといったら、やはり「真摯さ」である。この本にも出ていた。
「人間性と真摯さは、それ自体では何事もなしえない。しかしそれらがなければ、ほかのあらゆるものを破壊する。したがって、人間性と真摯さに関わる欠陥は、単に仕事上の能力や強みに対する制約であるにとどまらず、それ自体が人を失格にするという唯一の弱みである。」
仕事に全身全霊を傾けて、仲間と心から笑ったり泣いたりできる人というのが、経営者の基本条件なのだ。現実には多くの経営者がその基本条件を満たせていないことに問題があるということは、この本が書かれて半世紀近くたっても変わらない。
そして時間は普遍的な制約条件という考え方。
「成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。たとえ一日の四分の一であっても、まとまった時間であれば重要なことをするには十分である。逆にたとえ一日の四分の三であってもその多くがこま切れでは役に立たない。」
ドラッカーに言わせたら、ビジネス書にありがちな細切れ時間の有効活用なんてことを考えていてはダメなのである。いかにまとまった時間をつくるかこそ重要なのである。連続して3、4時間はぶちぬきで時間をとらないと、まともな知識労働なんてできないっていうことだ。多くの管理職が間違っている。そして優先順位より劣後順位の決定が重要と。
問題より機会を見よ、もなかなか忘れがちな警句だ。失点を防ぐだけでは勝てない。
「問題に圧倒されて機会を見失うことがあってはならない。ほとんどの組織の月例報告が第一ページに問題を列挙している。しかし、第一ページには機会を列挙し、問題は第二ページとすべきである。よほどの大事件でも起こらないかぎり、問題を検討するのは、機会を分析しその利用の仕方を決めてからにすべきである。」
議題の順番の変更で対応できるから、マネジメント会議ですぐにでも実践しやすいポイントだ。楽しそうなプランを考えることに夢中になって、問題の検討が時間切れになってしまうのではないかと懸念したりもするが、それは会議の仕切りの問題なのであって、本質は問題より機会を見よということの方なのだ。
そして上司の役割。会社に成果で貢献している人を大切にせよ。
「成果をあげるエグゼクティブは、部下が上司たる自分を喜ばせるためなどではなく、仕事をするために給料を払われていることを認識している。オペラの舞台監督は、プリマドンナが客を集めてくれるかぎり、彼女が何度かんしゃくを起こそうと問題ではないことを知っている。最高の舞台をつとめ上げるうえで必要なかんしゃくであるならば、それを我慢することも舞台監督の報酬のうちである。」
自分とうまくいっているか、ではなく、いかなる貢献ができるか、で部下を評価する。特に重要な分野における卓越性を評価する。マネージャーは、わがままなプリマドンナにブチ切れたらダメなのである。エグゼクティブに対して、人間的な度量の大きさを求めるのがドラッカーの経営哲学なのであると再認識。
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