横道世之介
読み終わってページを閉じたとき、思わず本を抱きしめたくなる、いい本です。
現在40歳前後で80年代後半に東京で大学生だった人に特におすすめです。
横道世之介はこれといった取り柄のない普通の大学生(おそらく法政大学)。長崎から上京して一人暮らしを始めた1年生の12カ月が毎月1章で語られ、計12章でこの小説は構成されています。
一人暮らし(東久留米)、アルバイト(高級ホテル)、サークル活動(サンバ愛好会)、夏休み、旅行、学園祭、自動車教習所...。友情と恋愛もいくつも経験します。世之介の大学生活はそれなりにユニークなものですが、当時の大学生ならどこか自分の体験に似た懐かしさを感じさせるシーンの連続でもあります。
大人になって学生時代の思い出を振り返るとき、あいつはいい奴だったなあ、でも今どうしているだろうかと、みんなに思われるのが、世之介です。草食系のおひとよし。周りに人は集まってくるし、女の子だって寄ってくるのですが、淡い交わりでよしとしてしまうから、記憶に薄くしか残らない。
横道世之介は、20年前の思い出の中に、忘れものを取りに行くような体験ができる小説です。多くの初体験の不安や期待を思い出させてくれて、懐かしさがこみ上げてきます。そして、当時は自分のことばかりに必死で見逃していた細部にも、きっと多くのドラマがあったのだということを教えてくれる作品です。
いい本読んだなあとしみじみ。
・学問
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1130.html
感動青春小説としてはこの作品が好きな人におすすめ。
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