怪、刺す
怪談と挿し絵で、「怪、刺す」。
『新耳袋』で有名な怪異蒐集家・木原浩勝と、ホラー漫画の伊藤潤二がタッグを組んだ怪談絵噺。テキスト6,7ページ、数枚の挿し絵があって一話という独特のスタイルで九話。短いがどれもクライマックスがゾクっと怖い。
この二人の組み合わせは相性がいいと思う。伊藤潤二単独のホラー漫画は『うずまき』みたいに、現実離れしていてファンタジーだ。自分の身におきるんじゃないかというリアルな怖さがうすい。この作品では実話を怪談作品に仕立てる名手、木原浩勝の原作を描くことで、本物の怪談になった。
私は怪談が大好きだ。子供の頃、夏休みにお昼のワイドショーで放送していた「あなたの知らない世界」をかかさずに見ていた。身近に起きそうな心霊や呪いの話にびびりながら、絶対安全な自宅の茶の間で、これまた怪談好きだった祖母と一緒に、かき氷なんかを食べながら見ていた。原体験が、そういう実体験ベースの再現映像にあるせいか、実話のクレジットがないと興味がわかない。創作だと全然怖くないし、聴く価値さえ感じないのである。
そういう実話怪談へのこだわりの人におすすめである。新耳袋に視覚要素が加わって一層よいかんじ。静かな深夜にひとりで読もう。騒がしい電車とか、おしゃれなカフェで読むべきではない。もったいない。ふと目をあげたとき暗い窓の向こうになにか見えそうで怖くなる、そんな本だから。
この二人には続編を毎年夏に出してほしい。
スペシャルとして、巻末に伊藤潤二の読切り漫画もついている。
・実話怪談「新耳袋」一ノ章
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/10/post-298.html
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