ブルーカラー・ブルース
労働者の悲哀と呻き。まさにブルース。実体験ベースの劇画。
著者、渾身のデビュー作。
理系大卒で工事の現場監督に送り込まれた主人公(24歳)の悲惨な日常が描かれる。
慢性的な睡眠不足、失敗、職人の罵倒、暴力、土下座...。
精神的にも肉体的にもボロボロだが、ひとつの仕事を3年は続けないと転職が難しいと思って、主人公は耐え続ける。なんのために働いているのかわからないから、自分の不遇のなにもかもが、不合理と悪意にみえてくる。
作者の体験がもとになっているだけに、主人公の不安や怒りが生々しく伝わってくる。何度かある修羅場では、読みながら思わず拳を握りしめてしまったほど。主人公は安易な気持ちで就職活動をしていた自分をくやむ。
だが、この漫画は『蟹工船』のような資本家に対する抵抗のプロレタリアート文学ではない。自分が変われば、世界が変わるという自己改革思想の作品である。主人公は悪戦苦闘の末に、自分なりの働き方、生き方をみつける。後半の転職活動の展開は、ブラックな職場に入って出口が見えなくなっている人に希望を与えるものでもある。
ブルーカラーにせよホワイトカラーにせよ、内発的な動機で働かない限り、どんな仕事もブルースだ。逆にいえば、かなりの逆境でも人はそれを糧にして成長、成功できるということでもある。この著者が凄いのは、過酷な体験を、漫画作品に昇華して、人々に支持され、賞を取ったことだ。(第一回ネクストコミック大賞の期待賞を受賞)。
期待賞。まさに次回作に大変、期待してしまう。この著者ならば、まだ描くネタを使い果たしてはいないはずだと厚みを感じる。
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