日本のセックス
色モノだけど大傑作。面白い娯楽小説をお探しならぜひ読むべきです。
それにしてもなタイトルなのでカバーをつけないと外で読めませんが、横着な私はカバーはつけないで、帯をずらすことで背のタイトルを隠しながら(日本の、だけ見える状態にする)、電車で読んでいました。でも、それだとやっぱり、前の人に「のセックス」を読まれちゃうかもしれないですし、卑猥な言葉ばかりの本文が隣からのぞかれちゃうんじゃないかとドキドキで、落ち着きませんから、やっぱりカバーをつけてゆっくり読むしかないですね。あ、ちなみにこれは小説です。
美人の妻を他人に抱かせることに無上の喜びを感じる佐藤と、そんな変態の夫に従って300人以上に抱かれ、マニアの雑誌への投稿にも同意する妻の容子(東大卒)。夫につきあわされているようなそぶりでいながら、実は容子も決してキライではないのだ。二人は週末にはスワッピングマニアのコミュニティに参加して、きわどい複数プレイを楽しんでいる。だが、爛れた複雑な人間関係が、やがてこの夫婦を悪夢のような事件に巻き込んでいく。
前半が強烈な官能小説で、後半がシリアスな法廷サスペンスで、最後は純文学もしているというバラエティ豊かな文体複合作品である。前半の官能部はマニア投稿雑誌の体験記のノリで淫猥描写の連続で読者の劣情を煽る。裁判が中心となる後半では、乱交プレイでオスとメスとして性に溺れた男女が、一転して社会生活を営むしらふの顔で登場する。その大きな落差がこの作品の魅力であり、日本のセックスの抑圧度の強さをあらわすものでもある。
むき出しの欲望が全裸になってリビドーを解き放てば、一瞬のカタルシスはあっても、その後には社会的カタストロフしかないという、滑稽で悲劇的なマニアの愛の宿命小説である。
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