グルメの嘘
「飲食店を取り上げるマスコミに、ジャーナリズム精神は皆無」
超辛口のグルメ業界批判本。メッタギリしていて著者が訴えられないか心配。
だが、グルメ記事の読み方がよくわかる。とても勉強になった。
・店主が毎朝ネタを仕入れに築地に行く鮨屋
・一人でも多くの人に自分の料理を、といって支店を出すオーナーシェフ
・ワインを出す鮨屋、・ビールを置かないフレンチやイタリアン
・丸ビルや六本木ヒルズやミッドタウン等再開発ビルの店
・大間の鮪を出すというそこらへんの店
にはろくな店がないぞという。なぜダメなのか、素人にはなかなかわからない業界事情の説明がある。「飲食店業界にはびこる悪しき慣習や癒着、そして偽りに対してメスを入れていく」激辛モード。
著者いわく、まっとうな評論は儲からない。ヨイショライターを徹底的に叩いている。
著者が特に許せないとするのが料理評論家やジャーナリストと名乗る人たちの店との癒着。「もっと許せないのは、自分が関与した店を自分が連載頁を持っている週刊誌や月刊誌で意識的に何回も取り上げて絶賛することです。これは一般読者への背信行為以外の何物でもありません。雑誌の原稿料や本の印税だけでは足りないと、金儲けのためにコンサルタント業やプロデュース業へ奔るようですが、それなら評論家やジャーナリストの看板を下ろしてからにしろと私は言いたい」と手厳しい。
有名評論家たちの「お食事会」「プロデュース」「特別待遇」といった慣れ合い慣行がいかに評価をねじまげているか暴露する。
そして、著者いわく、評論家だけでなく、まっとうな飲食店も大儲けできない。拡大志向やメディア志向の飲食店は劣化するのみとして徹底的にやり玉にあげている。出版業界や放送業界とのもたれ合いも糾弾する。
著者のストイックなまでの評論家としての誠実さ追求姿勢は素晴らしい。だが、ミシュランブームにせよ、B級グルメブームにせよ、一般人が外食に興味を持つきっかけは、プロデューサが飲食店と仕組んでつくりだすものが多い気もする。すべてを欺瞞だといって封じてしまうと、業界全体がシュリンクしてしまうのではなかろうか、とも思う。もちろん著者のように本物を厳然と判別する人は絶対必要であると思うが...。
放送作家や業界人が絶賛して集まるのは、ただ高級食材を濃い味付けで出すだけの店ばかり、というのは、私も行ってみてがっかりしたことが何度かあるので、納得だなあ。
・ラーメン屋の行列を横目にまぼろしの味を求めて歩く
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/05/post-1218.html
・世にも微妙なグルメの本
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/07/post-416.html
大ぐるめ―おとなの週末全力投球!悪魔のような激旨101店128品
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/101128.html
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