ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは
・ザッポスの奇跡 The Zappos Miracles―アマゾンが屈したザッポスの新流通戦略とは
これは今年初めに読んで、感動して「いいよ」と何冊も周囲に配った本です。
2009年に米国アマゾンに900億円で買収された靴のオンラインストア ザッポスの伝説。同社はCEOをはじめ500人以上の社員がツイッターでコミュニケーションをしているソーシャル戦略の会社としても有名ですが、この本はもっとザッポスにとって本質的な"人の力を主電源とする感動サービスの仕組み"を描いている。ツイッター戦略はその戦略からでてくるものだ。
CEOのトニー・シェイは90年代後半バナー広告交換コミュニティとして大成功を収めてマイクロソフトに買収されたリンクエクスチェンジの創業者でもある。私は最盛期のリンクエクスチェンジの米国オフィスを訪問したことがあるが、ユーザーからの熱烈なファンレターをオフィスにたくさん貼りだしていた様子を思い出した。顧客満足に重心を置いた経営は出発点から変わらない。
お客様に感動を与えるために「顧客を満足させるためなら、ほとんど何をやってもよい」ほど大きな裁量権を与えられたコールセンターのメンバーたち。彼らが作りだすドラマは、ソーシャルネットワークに紹介されて増幅される。
「「ザッポスのCLT社員は、もし仮に顧客が求めている靴が、ザッポスに無かった場合に、必ず他社のサイトを最低三個はチェックして、その靴を入手できるところがないかどうか調べるように、教育されています。」とCEOのトニー・シェイは言う。」
顧客は今回は他のサイトで買っても、次回も必ずザッポスに電話をかけてくる。目先の利益ではなく、長期的に熱烈に顧客に愛されることを優先する。ザッポスではコールセンターが会社のコアを形成している
徹底したカスタマーフォーカスと同時に徹底した従業員フォーカスも特徴だ。企業は本来、運命共同体であるはずなのに、経営トップや投資家ばかりが甘い汁を吸って、社員に還元されないこれまでの企業とはまったく異なる。従業員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない。
ザッポスはコミュニティ的な企業だ。どんな会社を作るのかということを全員で考え続ける企業だ。考え続けることが経営戦略なのだ。そうすることで共同体としての企業の力を引き出している。「カルチャーを創造できれば、ルールをゼロにできる」のだ。
"企業文化が強み"というのは本来は日本の大企業のお家芸でもあったはずだが、成果主義やリストラを濫用して、すっかりその強み、信用が失われてしまった。当面の失地回復は難しそうだ。むしろ、皆でオールを漕いでいる感覚のでるベンチャー企業の方が、企業風土は信憑性を持ちやすいと思う。トニー・シェイみたいに、コミュニティ型リーダーシップで経営センスを持った人が日本でもそろそろ登場してくるのではないか。
翻訳ではなくて日本人が書いているのも驚き。
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