アップルvs.グーグル
IT業界の2大イノベーター アップルとグーグルを今、どうとらえたらよいかを明解に教えてくれる新書。著者は小川 浩氏、林 信行氏。両者の歴史のふりかえり、それぞれの戦略と戦術、競合の展望など、今はこの2社の動きからITの主戦場の最新動向が見えてくる。
「2004年にメディアの近未来を描いた『EPIC2014』というフラッシュ・ムービーが話題を呼んだが、その中では、グーグルとアマゾンが合併して、グーグルゾン(Googlezon)となるという未来予測が描かれていた。しかし、僕はその頃から、そうではない、むしろアップルとグーグルの組み合わせこそが新しいインターネットサービスを生む、言うなればグーグルップル(Googlepple)の方が実現する可能性が高いと主張し続けてきた。」と著者のひとりはいう。
確かにこの2社の親和性は親和性が高い。ポジショニングが近いがために競合も生じる。いまスマートフォン市場で起きているバトルは、これから電子書籍端末やテレビデバイスでもこれから熱い戦いが繰り広げられそうだ。
2010年代後半に向けてグーグルが定義したその事業領域は、PC、携帯電話、テレビ、自動車の4つのデバイス上でのコンピューティング。「ネット接続を果たしたコンピューターはデスクトップとノートブックを合わせて世界中でおよそ14億台。携帯電話は40億台に達するという。そしてテレビは8億台、自動車は12億台となる。」という大きなマーケットだ。アップルも同じ市場を狙っている。戦いはまだまだ続く。
この2社の戦争は世界を豊かにするものだと思う。激しい競争があるから、両者はつぎつぎに革新を生み出している。マーケットの原理が正しく機能している例と言えるのではないだろうか。著者らも書いているが、なにより悔しいのはこの華々しい戦いに、日本企業は割って入ることさえできないことである。
なぜ日本企業はかなわないのか、この本にも分析があるが、私の考えは日本の大企業トップには起業家精神がないからだと思う。スティーブ・ジョブズもエリック・シュミットも組織の論理で喋っていない。アップルのCM「自分が世界を変えると本気で信じている人々が本当に世界を変えている」そのままなのだ。
この本は現状をとらえる見方をわかりやすくさずけてくれる。
たとえば、
・情報の民主化を広げるグーグル
・人々の能力をレベルアップするアップル
というような対比で、両者の本質を説明する。
両社と市場のデータと事実、経営者の発言の引用など情報も多いので自分なりの業界展望を持ちたい人にとっても考える材料になる。ただし、状況はどんどん変わるので、旬のうちに読むのがおすすめである。
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