マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた"ちょっとした発想"
・マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた"ちょっとした発想"
『ニューヨーカー』の名コラムニスト マルコム・グラッドウェルの傑作コラム集。
TVショッピングの王様ロン・ポピール
ケチャップ帝国をつくりあげたヘンリー・ジョン・ハインツ
「ブラックスワン」で著名な投資家ナシーム・タレブ
戦後アメリカでヘアカラーを普及させたシャーリー・ポリコフ
ピルを開発して広めたジョン・ロック
カリスマ調教師シーザー・ミラン
世界を発想で変えた商売の天才たちのエピソードが5つ。
アメリカっていうのは個人の才覚一つでどこまでも成りあがれる自由の国なのだということがよくわかる。TVショッピングの王様ロンコ社のロン・ポピールなどは典型的だ。自分が開発した商品を、テレビで実演販売して巨額の富を得た。この本に取り上げられているのは、こうしたわかりやすいアメリカンドリームの物語なのだ。
娼婦のファッションだと軽蔑されていたヘアカラーを一般の女性に普及させたシャーリー・ポリコフや、避妊薬のピルの開発と普及によって女性の生き方を変えたジョン・ロックなど、単に経済的な成功を収めただけでなく、天才たちの業績はアメリカの文化史の一部といってもいいだろう。マルコム・グラッドウェルが結局、一番語りたいのは「アメリカ」という国なのだと思う。
「はじめに」で、マルコムグラッドウェルは、自身の発想法についても触れている。ふたつあるのだという。
「アイデアを見つける秘訣は、たとえ相手が誰であろうと、たとえ何であっても「語られるに値する」物語がある、と自分に思い込ませることにある。」
どんな話でも深く追求していけば絶対に価値があることが見つかると信じ込めると、おもしろい話になるらしい。そして、
「アイデアを見つけるもうひとつの秘訣は、権力と知識の違いを理解することだ。本書には権力者、あるいは著名人と呼べる人間は数えるほどしか登場しない。私が興味を抱くのはマイナーな世界の天才たちなのである。 私が何か物語をみつけたいときは、トップに君臨する人間からは取りかからない。現場から探す。実際に作業を行っているのは現場で働く人間だからだ。」
神は細部に宿る。ロン・ポピールはヒット商品となったロティスリーキッチンを開発する際に、なによりも、きつね色の焦げ跡がつくことを重視した。それが消費者に対して最大のセールスポイントになるということを理解していたからだった。自らが現場で料理をしているからこそ、それができたのだった。
著者のマルコム・グラッドウェルは、成功者の体験からそうした重要な細部を見つけだす天才である。ドキュメンタリや取材ベースのコラムを書きたい人にも、勉強材料としてこの本はすばらしいと思う。
第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/03/1-2.html
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