中世民衆の世界――村の生活と掟
中世日本の村の掟の資料研究。
オキテって言葉は新鮮だ。ホンモノのオキテってどんなものだったのか好奇心がわく。
この本には資料に基づいて本物がいっぱい出てくるのだが、わかりやすくいうと、
おまえら村の掟で違反者を勝手に処刑しないように
根拠不十分で死罪にしちゃった場合は、子供に財産を継がせよ
村に旅人を泊めるのはご法度だが惣堂なら無許可でとまってよろしい
平常時の人身売買は重罪だ
でも飢饉のときだけは金持ちは貧乏人を助ける意味で奴隷にしていいよ
村人は軍役に対しては食料や補償を求めた
山を荒らすものがいたら鎌を没収すべし
百姓は年貢を払ってからならば逃げてもよろしい
などである。細部を見ると、中世の百姓民衆の権利関係や意識がみえてくる。
たとえば、ある地方で地頭が勝手に村を売ってしまい、別の領主がやってきたが、前の領主と村人が結んでいた約束事(祭りの際の村人を饗応すること)を、新領主に引き継いでいなかったため、もめ事になり売却自体が無効化されてしまった事件記録。地頭が村を売ることができたというのも驚きだが、約束が違うと訴え出て、その要求を通してしまえる村人との関係性も意外。
私はこの本を読むまで当時の民衆は「ミミヲソギ、ハナヲソギ」で領主に奴隷のようにこき使われて移動の自由もなくて、活かさず殺さずに置かれていたというイメージが強かった。だが、実際の中世の民衆は必ずしも支配者のいいなりではなくて、自治を守っていたようなのである。
村の力で処刑や追放を行うという厳しい側面もあったらしい。もめ事の解決には、残酷な鉄火起請でさばいたなんて話も出てきて、
・日本神判史 盟神深湯・湯起請・鉄火起請
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/07/post-1267.html
内容的にこの本とつながります。
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