花伽藍
主にレズビアンの恋愛を官能的に描いた短編集。
「たづさんの中で射精したい。二人の赤ちゃんがほしい。ゆずちゃんの代わりにあなたに授けてあげたい」
身体の構造でも結婚という制度でも、結局結ばれることができない宿命の女同士が、激しく愛し合う。排除された者の孤独が精神的なむすびつきを異性以上に強いものにする。そして一度は2人だけの愛の世界を作り上げるけれども、構造と制度の問題は、やがて二人の世界にもひび割れをもたらしてしまう。
とりわけ夏祭りの夜に太鼓をたたく女が自分を熱く見つめる浴衣の人妻と、底なしの穴に落ち込んでいくような恋愛をする『鶴』が鮮烈。
この短編集の5つの作品には年齢の異なる女性がでてくるが、全体として同性愛の女性たちの一生を描いている。最後の作品『燦雨』は高齢のカップルが、それぞれの家族の反対を押し切って、2人で暮らして、互いの最期を看取るという内容。高齢化が進めば、同性愛者の高齢化というのも進むわけで、ここに描かれた物語は現実にも増えるのかもしれない。
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