MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク

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・MBB:「思い」のマネジメント ―知識創造経営の実践フレームワーク
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「自分はいったい何をやりたいのか」
「自分の夢は何なのか」
「自分はどういう職場にしたいのか」
「自分はどう世界と付き合いたいのか」

バブル崩壊後、多くの日本企業が、それまでの日本型経営を続けることが難しくなり、目標管理と成果主義を徹底的に導入した。その結果、個人の思いは語られることが少なくなった。数値目標導入によって経営が一時的に改善されたかのようにみえても、ギチギチに合理化、効率化した組織からは創造的な発想は出てこない。社員は高い数値目標の達成だけを求められて疲弊するばかり。だから、著者はMBOに埋め込む新しい考え方MBB(Management By Belief 思いのマネジメント)を提唱する。

MBO(Management By Objectives 目標管理)では、個人は

「まず、経営者は株主に対して利益を約束する。そして、それを念頭に置いた経営計画を立てる。今度は、その数字を各部門や各課に割りつける。それによって社員個々人が目標にする数字も決まってくる。理論上は個人がきちんと成果を挙げれば、課や部の目標数字もクリアでき、課や部の目標がクリアされれば全社の目標も実現できるしかけだ。」

という合理的なシステムの歯車、部品のひとつになる。だが、心を持った個は、意思を尊重されずに使われるだけでは、心身ともに摩耗してしまう。論理分析思考からはイノベーションも生まれない。企業の成長と個人の幸せのベクトル合わせがMBBの目指す新しいしくみである。

「経営において個人の思いを重視する考え方は、人間や企業をどう見るかという基本的な人間観、経営観に通じる問題でもある。つまり、人間や企業を「作業工数」「金儲けの集団」と見るのか、それとも「自ら考え、知を創造していく主体」として捉えるかである。」

この本では、今、知識創造の主体としていきいきと働くビジネスマンや経営者をケースとしてとりあげて、うまくMBBを実現するための経営ビジョン、人事制度、教育制度、評価制度、リーダーシップ論が語られる。

MBBの定義はこう書かれている。

「会社の目標や組織の背景にある経営陣や上司の思いと、自分自身の仕事やキャリアに対する思いをぶつけ合う『創造的対話』によって会社にとっても意味のある業務上の目標を見出し、それを設定して、実行していくこと」

トップダウンで効率を追求する欧米型の経営手法と、現場と経営の相互コミュニケーション(ベタな飲み会含む)を大切にする日本型の経営手法の融合が、MBBの目指すモデルである。それには経営者も社員も全員が、"しみじみ"と「これしかない」と思えるまで話し合う場づくりが必要になる。

たとえばケースのひとつ星野リゾートの社長の言葉からは強い思いが伝わってくる。

「温泉に浸かれて、本物の和食が味わえ、畳の上でくつろげる日本の温泉旅館は世界一のホスピタリティを発揮する力を秘めています。フランスのまねごとをしているアメリカのホテリエよりもよほどポテンシャルは高い。そういう誇りが社員の心の底にはあるんです。だから私が『うちもリッツ・カールトンになろう』なんていっても社員は燃えません。しみじみしません。だから、むしろ『ペニンシュラを日本から追い出すんだ』といったほうが、意気が上がるのです。」

やりがいと楽しさのある創造的な組織の作り方。こうした思いを個人と組織がどうやったら共有できるのか。しみじみ感をつくりだす実践とは何か。そのフレームワークを示すのがこの本である。

・世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1003.html

・人事異動
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-947.html
徳岡 晃一郎氏の著書。


ところで、著者のひとり徳岡先生らと私は多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所を運営しています。知識創造型の企業を、「人材マネジメント」と「リーダーシップ開発」に焦点を当てて研究する機関です。セミナーや研修も請け負っています。お問い合わせ下さい。

・多摩大学知識リーダーシップ綜合研究所
http://www.ikls.org/

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このページは、daiyaが2010年7月 5日 23:59に書いたブログ記事です。

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