認め上手 人を動かす53の知恵
ほめ上手よりも認め上手になれという本。部下のいる人におすすめ。
日常的に部下をほめるとなると、どうしても欺瞞性やうさんくささが伴ってくる。毎日部下がホームランばかり打つわけではないからだ。そもそも、ほめる=褒美、しかる=罰で人を動かせるという単純な方法論にも限界がある。
おおげさに称賛するのではなく相手を人間として尊重すること。誇張を含んだ「ほめる」よりも、ありのままを「認める」ことのほうが、ほめられた者の長期的な有能感や自己効力感を引き出しやすいとして、著者は認め上手になることをすすめる。そして挨拶、声かけ、名前を出す、異性を入れる、同期生ネットワークをつくる、お金よりも名誉の成果主義を導入する、家族に尊敬される手助けをする、など認め上手になるノウハウが紹介されている。
ある程度大きな組織では、デキる社員もいればそうでもない社員もいる。ほめたり認めたりする際には、モチベーションの違いに注意せよと説く。
「成績が低い者もそれなりにがんばるはずだという見かたもあるが、それはそもそも成績が上位の者と下位の者とではモチベーションの構造がまったく違うということを理解できていない。上位の者は注目されているうえ、がんばって成績を伸ばせばさらに「すごい!」「たいしたものだ」と感嘆、称賛される。だから、ますますがんばる。それに対して下位の者は、絶えず尻を叩かれるし、多少がんばって成績が伸びたとしても感嘆や称賛をされることはない。せいぜい「努力しているな」くらいで終わる。だから、やってやろうという前向きな意欲がわかないのである。」
下位の者には、別の尺度で認めること、別の次元で評価してやることが重要だという。たとえば売り上げや契約件数ではなくて、訪問回数や顧客満足度などの軸や、社内のクラブ活動、地域への貢献など、仕事以外であっても紹介する。組織の全員のやる気をひきだすための方法論がとても参考になった。
そして認める、ほめるは斜め上から目線で。
「「上から目線」と「斜め上から目線」の違いをたとえていうと、監督ではなくコーチ、親ではなく兄や姉の立場に近い。監督の前では萎縮してしまう選手もコーチのいうことなら聞けるし、親に歯向かう反抗期の子でも兄や姉の忠告には耳を貸す。」
著者は同志社大学教授で専門は組織論、人事管理論。表彰活動を世に広める日本表彰研究所所長。日本の組織にありがちな状況が書かれているので大変にわかりやすかった。私は人をほめるのが苦手なのだけれども、参考になる話が多かった。
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