ガラパゴス化する日本
「筆者は日本の独自性を否定するわけではない。むしろ日本の独自性は強みになる。ガラパゴス諸島に多くの観光客が集まるように、希少性は差別化要因になる。本書でガラパゴス化という場合には、過度の垂直統合ビジネスによるデメリットや閉鎖性を強調しているのであって、希少性、独自性を否定しているわけではない。ただ狭いガラパゴス諸島の中で独自進化していても仕方がない。世界に向けて、独自進化した種が生き延びていかないといけない。」
欧米のグローバル・スタンダードに合わせないと日本は没落してしまうぞという、私が嫌いな単純グローバリズム論ではなくて、日本は脱ガラパゴス化してグローバルのゲームのルールづくりに積極的に関わるべきだという内容の本。これは結構、納得だった。
米国もガラパゴス化しているが、日本と違って人口が増えており、どんどん拡大するガラパゴス諸島として繁栄できる。一方の日本は人口が多いからガラパゴスでやってきたが、これからは減少に向かう運命にある。必要な分野は脱ガラパゴス化や「出島」戦略で、状況の変化に対応しなければ生き残れない。
脱ガラパゴス化のキーワードとして以下の6つが挙げられている。
1 リーダーシップ
2 形式知化
3 ゲームのルールをつくる、ゲームのルールをかえる
4 水平分業、モジュール化
5 新興国における新しい生態系の構築
6 ハイブリッド化
産業界ではとりわけ3のルールづくりへの関与が重要なのだと思う。結局のところ、国際標準を決めているのは少数の権威者や専門家エリートたちの密室政治だ。日本の技術力は高いのに、政治に関与しないから、国際市場では取り残されてしまう。携帯、テレビ、医療、教育、会計などのガラパゴス化の経緯が紹介されている。
「国際政治学では、時にこのような人々のことを知識共同体(エピステミック・コミュニティ)という。そして、知識の「もっともらしさ」は、このエピステミック・コミュニティの了解事項として、生み出される場合が多いのである。日本における問題は、エピステミック・コミュニティに属する人々が、相対的に少なく、またこれらの人々が日本の政策決定と直接結びつく割合が少ないということである。」
一足飛びにそうした国際交渉のできる人材は育たないので、まずは日本初のインデックス(指標)やランキングを世界に発信してみてはどうかと著者は提言している。日本の得意分野であれば効果はあるのかもしれない。
で、なんにせよ英語力は必要である。
今年に入って楽天とユニクロは社内公用語を英語にすると発表している。極端だがこれはこれでベンチャーとしては英断なのではないかと思う。成功すればこの本で言う「出島」として機能するだろう。特に海外中心へ移行するユニクロは、社員のダイバシティも高めるらしいので(13年には社員の4分の3が外国人)相当本気だ。
・三木谷浩史・楽天会長兼社長――英語ができない役員は2年後にクビにします
http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/810ee47297d49033c2a4b43a0a5216e0/page/1/
・<ユニクロ>新世界戦略 英語公用化...12年3月から
http://mainichi.jp/select/biz/news/20100624k0000m020123000c.html
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