影響力 その効果と威力
人間関係における影響力とは何かを社会心理学的に総括する新書。よくまとまっている。とても勉強になる。そして面白い。
まず10の影響力が分類されて個別に説明されている。
1 賞影響力 賞のコントロール
2 罰影響力 罰のコントロール
3 専門影響力 専門的知識
4 正当影響力 高地位、資格
5 参照影響力 理想像
6 魅力影響力 魅力性
7 情報影響力 説得力ある情報の提示
8 対人関係影響力 コネクション
9 共感喚起影響力 苦境の提示
10 役割関係影響力 役割に基づいた要求
基本は賞罰であり、その上に3~6の影響力が形成される。7~10は影響する人がリソースを持たない場合の影響力という分類になっている。
身近なところではたらく影響力の中身も解説が多くある。
たとえば、ある人を好意的に思うようにさせる要因
(a)近接性「近くにいる人、好きになる」
(b)容貌「見た目を整え、好印象」
(c)類似性「似ている人に惹かれてる」
(d)返報性「好意を示して、いい関係」
の4つがあるという話。結局のところ、単純接触の効果も高いので、名前を連呼する政治家の活動も、個人的にはうざいなあと思うわけだが、大局的には功を奏するやり方みたいである。
集団になると極端な意見になる集団極性化現象。偶然聞いた話は信憑性が高い「漏れ聞き効果」の検証。長い話をする場合は最初と最後が強く印象に残るという初頭効果と新近効果。集団内の影響力のメカニズムがたくさん紹介されている。
少人数のときにはみんながちゃんと働くのに、大勢になると手を抜く人が現れる「社会的手抜き」の研究が特に興味深かった。組織の力が人数に比例しないのはなぜかということがよくわかる。
社会的手抜きが起きる条件は
・行為者にとって課題がつまらなく、重要でない。
・課題が簡単である(多くの努力や技術が必要とされない)
・各行為者がまったく同じ課題を行う
・一緒に課題を行う他者が見知らぬ人である
・自分以外の他者の作業能力が高いと期待される
・男性である
・西洋文化圏である
ということが研究の結果分かってきている。日本人は比較的手抜きをしないらしいのだが、うなずくところが多い。そうだよなあ。男ばかりのときには手抜きが起きる、よね。数の力で勝負したい場合は女性だらけのチームを作るのがいいのかもしれないなあ。
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