直筆原稿版 オーパ!
すべて直筆原稿で再現された開高健の傑作「オーパ!」である。
自筆原稿265枚を原稿用紙のまま(70%)縮小。
電子書籍時代に"紙の価値"で真っ向勝負している。
内容はアマゾンで釣り三昧に耽る旅行記。
私も釣りが好きだったので子供の頃に夢中で読んだ本だが、改めて作家の肉筆で読む体験は、本当に楽しかった。
3000円の価値、大いにあり。
開高健の文字は達筆とは程遠い癖のある文字だが、読みやすい字だ。最初の10ページくらいは原稿用紙に書かれた肉筆を読むということ自体に目が慣れていないため、ちょっと戸惑った。だが慣れてしまえば活字と同じくらいの速度で読める。
そして活字で読むときよりも"行間"に込められた思いが強く伝わってくる。作家の話を直接聞いている気がするのだ。
文字には作家の息遣いがある。丁寧に書かれたところ、雑な字で手早く書かれたところがある。書き直しの跡があって、推敲前の文章が取り消し線の向こうに見え隠れする。削るときはばっさり数行を消している。文章の効果を高めるために余計を削る意図がわかって文章の勉強にもなる。
私はほぼすべての著作を読んだファンだが、この一冊を読んだことで開高健という作家について3割増しで、どういう人だったかわかった気がする。自筆原稿そのまま本はそれくらいリアリティを伝えてくれる古くて新しいメディアだと発見した。
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