競争と公平感―市場経済の本当のメリット

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・競争と公平感―市場経済の本当のメリット
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競争と公平感に関する経済学者の論考集。面白い。

「貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で多くの人々はより良くなる?」

市場経済への信頼を問う、この質問に対して日本人は49%しか賛成していない。アメリカでは70%以上が賛成している(Pew Research Center)。日本の賛成の率は主要国の中でも顕著に低い。日本人は貧富の格差がつく競争を嫌う。

国際的な調査によれば資本主義への支持と相関するのは「人生での成功を決めるのは運やコネではなく勤勉である」という価値観であるそうだ。日本では、人生での成功を決めるのは運やコネである考える人が、90年で25%、95年では20%と少数派だったのに、2005年には41%と急増している。アメリカでは22.6%に過ぎない。

年齢別にみると若い世代ほど、この傾向は強い。長期の不況によって、努力しても就職できず、出世や成功もできない状況が続き、若年層の価値観に影響を与えているのではないかと著者は分析している。

所得はどう決まるべきか?を問う調査もある。

「アメリカでは、「学歴が所得を決定する」と考えている人の割合は77%であるのに対し、日本では43%にすぎない。また、アメリカでは「才能が所得を決定する」と考えている人が60%であるのに対し、日本では29%である。アメリカ人が重要だと考えているのは努力、学歴、才能の順番であるのに対して、日本人は努力、運、学歴の順番である。」

両国ともに1位は努力だが(アメリカ84%、日本では68%)、アメリカでは学歴と才能で所得が決まるべきと考える人が50%を超える。日本では10から15%にとどまる。日本の競争力が低下している理由、競争的な市場を形成することに失敗している大きな理由が、こうしたマインドの変化にあるのかもしれない。

最近、学生と会話していて、中学や高校でのテストの答案の返し方の違いが話題になった。私の子供時代は、テストは成績順で返していた記憶がある。少なくとも90点台や満点の生徒は誰なのかわかった。これはいまどきの、ゆとりの学校では考えられないことらしい。学生に驚かれてしまって私が驚いた。難関校の学生なのに。

この本は新書としては盛りだくさん。男女での競争マインドの違いや、薬指の長さと社会的成功の相関など、身近で興味深い話題から、国際的な統計をベースにした競争と公平感の比較、そして働きやすさの研究、最低賃金や外国人労働者問題への政策提言など、多くのわかりやすく、示唆に富む論考がいっぱいある。

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このページは、daiyaが2010年5月16日 23:59に書いたブログ記事です。

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