孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
人間の社会的つながりと孤独感に関する、社会学、心理学、医学、脳科学、経済学などのアプローチによる多面的な研究。
「1985年、アメリカ人の代表的サンプルに「心を許せる親友は何人いますか」と尋ねたとき、いちばん多い答えは3人だった。2004年、再び同じ質問をしたとき、いちばん多い答え(全回答の25%)は、ゼロだった。21世紀のアメリカ人の4人に1人が、何でも包み隠さず話せる相手は一人もいないと答えたのだ。」
21世紀に増大する孤独感は、あらゆる不幸の源になるという事実を、多くの研究結果が示している。孤独感を感じている人は、病気になりやすい。集中力や判断力が損なわれる。老いが早まる。社会的な成功と遠ざかる。鬱になりやすい。悪影響のリストは何十も続く。
他人から拒絶された時の脳の反応は、身体的な痛みを感じた時の脳の反応と部位を共有しており、脳にとって寂しさは痛みなのだそうだ。人間のような社会的動物は、社会的つながりを失うと生存が脅かされる。だから、孤独感を感じる能力は、遺伝子に織り込まれいる。
社会的つながりには、個人的なつながり(近しい人間に支持される)、関係的なつながり(より広い範囲で友人や親族と親交を持つ)、集団的なつながり(特定の集団への帰属意識を持つ)の3つの側面があるとされる。3つは密接に関係していて、どれを欠いても問題が生じる。
そして実際に孤立しているかどうかよりも、その人が孤独を感じるかどうかの方が本質的な問題だと著者はいう。結婚していようが、ファンに囲まれていようが、主観的に孤独をストレスと感じてしまうならば、悪い影響が出る。孤独の感受性は遺伝するということもわかっている。
研究によると孤独感は人間の幸福度にも社会的成功にも多大な影響を及ぼす。
「私たちの行った縦断分析によれば、孤独感の低さと収入の増加はどちらも幸福感の増大と関連があるものの、収入の増加は幸福感の増大には貢献せず、孤独感を減らすこともない。じつは、両者の関係は逆なのだ。幸福感の増大は、社会的なつながりに対するポジティブな効果を通して、収入の増加に貢献する。幸せな人は孤独感が減り、孤独感が低い人はより多くのお金を稼ぐ傾向にある。」
統計的にみると、孤独な人は収入が低く不幸になり、孤独でない人は収入が高く幸福になるのだ。
社会的つながりにおいて、ポジティブな面を評価することが、大切だということが、研究によって示されている。たとえばパートナーが昇進したときに共にに喜びあうことは、パートナーが昇進しそこなったときに気遣うよりも重要であり、夫婦が前途は愉快で楽しいという見通しを持つことが、苦しい時に慰めあうより重要になるという。
日常的に幸運や達成をお祝いする習慣は、幸福な人生の秘訣ということか。
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