ようこそ地球さん
ゴールデンウィーク。横浜にできた新スポットTOCみなとみらいに行ってきた。
ショッピングモールやシネマコンプレックス、ホテル・ニューオータニイン横浜を含む大型商業施設だ。「TOC(テーオーシー)」という名前は「東京卸売りセンター」の略に由来し、TOCビル、TOC大崎ビル、浅草ROX、TOC有明、TOCみなとみらいなどの商業施設、 オフィスビルの運営をしている会社だ。
「1926年(大正15年)4月に、SF作家として有名な星新一の父・星一が、星製薬株式会社として創業。星新一も社長を務めたことがある。現在は、ニューオータニと同じ大谷家が経営を行っている。」
なんてことが書いてある。こんなところで星新一の名前が出てくるとはびっくりした。
星新一はたくさん読んだ。
数ある名作ショートショートであなたのベストは何かと問われたら、本書収録の
『処刑』
と答える。思春期に読んで以来、この話が強烈に記憶に焼きついている。
囚人が流刑の星に流されて、ボタン付きの銀の玉を渡されるという話だ。なにもない荒野の星。水に溶かせば食べられる食料はもたされているが肝心の水がない。銀の玉のボタンを押すたびに空気から抽出した水が玉から出てくる。だがある確率で銀の玉は大爆発して囚人を殺してしまうと告げられている。荒野にはそこらに爆発の跡が見られる。
囚人は最初のうちは決死の覚悟でボタンを押した。出てきたコップ一杯の水で渇いたのどを潤した。少ししてまた押してみた。意外にも大丈夫だ。何度目で爆発するかは誰にもわからない。やがて囚人の感覚は麻痺して、ボタンをどんどん押して風呂にまで入る。
何かをするたびに未知の確率で死ぬかもしれない。
これって地球の普通の生活と同じじゃないかと囚人は悟ったのだ。
中学生だった私は、この話に感動した。そういう考え方があったか。人生は未知の確率の連続だし、人類の死亡率は何をしたって最終的には100%だ。ボタンをどんどん押すべきだなあ、と。大人になって起業したのは、この話の影響も1%くらいはあるような気がしている。
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