1Q84 BOOK 3
物語で読ませる作家と文体で読ませる作家がいると思いますが、村上春樹と言うのは両方を兼ね備えているタイプの希有な作家ですね。
ノーベル文学賞にノミネートされるなど海外で高く評価されている部分と言うのは、主に物語の部分なのじゃないかなと思うのですね。海外の読者は翻訳で読むでしょうから。複雑な構造の物語が内包する同時代性やメッセージ性も含めて物語の力が海外でも話題になった、と考えます。大江健三郎氏と同じでしょう。
でも、幸運なことに日本語で読むことのできる私たちは文体を味わうことができます。一言でいえば「1Q84は文体を味わう快楽の本」だったなあというのが感想です。第3巻は読み終わるまでに2週間もかかりました。わざとゆっくり読みました。毎日寝る前に数章ずつ(3人の登場人物を一巡ずつ)読むのが本当に楽しみでした。終わってしまうのが悲しいほどの、明解でうつくしい日本語で書かれた複雑で不思議な物語。
でも、私はこの第三巻は読む快楽体験の延長のメディアとしては嬉しかったのだけれども、物語としては蛇足だったんじゃないかな、第二巻で謎を残したまま終わりでもよかったんじゃないの?と思います。謎を明らかにして安直に終わらせてしまった感が否めません。海外ではどう最終評価されるのか気になります。
セールス的には第3巻も100万部達成で本当に読んでいる読者が100万人いるらしいことには驚きです。メディアの作りだす宣伝ブームだけでは、遅れて発売の第3巻目は買わないでしょうからね。文学の市場がまだ健在っていうのは素晴らしいことだなあと思いました。100万人が読んだらもはや神話だ。
で、個人的には
物語:80点
文体:100点
かなあ。
・1Q84 Book1 Book2
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1140.html
・1Q84マップ
http://1q84.shinchosha.co.jp/map/
青豆と天吾の移動地図。この通りに散歩したら楽しそう。
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