2010年5月アーカイブ

・食べログ東京横浜2010
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クチコミ投稿数120万件以上、月間1200万人以上が利用する食べログが本になった。

全24ジャンル、350店舗をランキング形式で紹介している。

電子書籍時代に紙の本のよさをうまく出しているなあと感心した。食べログというサイトは検索サイトとしてはよくできているのだが、自分が調べているジャンルや地域のデータしか出てこないから、"出会い"が少ないのである。紙の本はぱらぱらめくっているうちに、美味しそうな写真が見つかって、ああ、こんな店もあるのか、という発見がある。

パソコンと食欲の関係というのも、あるかもしれない。私だけではないと思うが、パソコン画面よりも、紙の本でうまそうな写真をみたときの方が、シズル感が強く感じて食欲がわくのじゃないだろうか、一般的に。そこにも電子書籍にない紙の可能性があるのじゃないか。

紙の本では編集が丁寧に入っていて、読みやすくて役立つクチコミが厳選掲載されているのもこの本の魅力だ。人気レビューアーのとっておき、という投稿者の顔が見える特集もよかった。

・影響力 その効果と威力
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人間関係における影響力とは何かを社会心理学的に総括する新書。よくまとまっている。とても勉強になる。そして面白い。

まず10の影響力が分類されて個別に説明されている。

1 賞影響力 賞のコントロール
2 罰影響力 罰のコントロール
3 専門影響力 専門的知識
4 正当影響力 高地位、資格
5 参照影響力 理想像
6 魅力影響力 魅力性
7 情報影響力 説得力ある情報の提示
8 対人関係影響力 コネクション
9 共感喚起影響力 苦境の提示
10 役割関係影響力 役割に基づいた要求

基本は賞罰であり、その上に3~6の影響力が形成される。7~10は影響する人がリソースを持たない場合の影響力という分類になっている。

身近なところではたらく影響力の中身も解説が多くある。

たとえば、ある人を好意的に思うようにさせる要因

(a)近接性「近くにいる人、好きになる」
(b)容貌「見た目を整え、好印象」
(c)類似性「似ている人に惹かれてる」
(d)返報性「好意を示して、いい関係」

の4つがあるという話。結局のところ、単純接触の効果も高いので、名前を連呼する政治家の活動も、個人的にはうざいなあと思うわけだが、大局的には功を奏するやり方みたいである。

集団になると極端な意見になる集団極性化現象。偶然聞いた話は信憑性が高い「漏れ聞き効果」の検証。長い話をする場合は最初と最後が強く印象に残るという初頭効果と新近効果。集団内の影響力のメカニズムがたくさん紹介されている。

少人数のときにはみんながちゃんと働くのに、大勢になると手を抜く人が現れる「社会的手抜き」の研究が特に興味深かった。組織の力が人数に比例しないのはなぜかということがよくわかる。

社会的手抜きが起きる条件は

・行為者にとって課題がつまらなく、重要でない。
・課題が簡単である(多くの努力や技術が必要とされない)
・各行為者がまったく同じ課題を行う
・一緒に課題を行う他者が見知らぬ人である
・自分以外の他者の作業能力が高いと期待される
・男性である
・西洋文化圏である

ということが研究の結果分かってきている。日本人は比較的手抜きをしないらしいのだが、うなずくところが多い。そうだよなあ。男ばかりのときには手抜きが起きる、よね。数の力で勝負したい場合は女性だらけのチームを作るのがいいのかもしれないなあ。

・直筆原稿版 オーパ!
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すべて直筆原稿で再現された開高健の傑作「オーパ!」である。

自筆原稿265枚を原稿用紙のまま(70%)縮小。

電子書籍時代に"紙の価値"で真っ向勝負している。

内容はアマゾンで釣り三昧に耽る旅行記。

私も釣りが好きだったので子供の頃に夢中で読んだ本だが、改めて作家の肉筆で読む体験は、本当に楽しかった。

3000円の価値、大いにあり。

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開高健の文字は達筆とは程遠い癖のある文字だが、読みやすい字だ。最初の10ページくらいは原稿用紙に書かれた肉筆を読むということ自体に目が慣れていないため、ちょっと戸惑った。だが慣れてしまえば活字と同じくらいの速度で読める。

そして活字で読むときよりも"行間"に込められた思いが強く伝わってくる。作家の話を直接聞いている気がするのだ。

文字には作家の息遣いがある。丁寧に書かれたところ、雑な字で手早く書かれたところがある。書き直しの跡があって、推敲前の文章が取り消し線の向こうに見え隠れする。削るときはばっさり数行を消している。文章の効果を高めるために余計を削る意図がわかって文章の勉強にもなる。

私はほぼすべての著作を読んだファンだが、この一冊を読んだことで開高健という作家について3割増しで、どういう人だったかわかった気がする。自筆原稿そのまま本はそれくらいリアリティを伝えてくれる古くて新しいメディアだと発見した。

スーパーマリオギャラクシー 2(「はじめてのスーパーマリオギャラクシー 2」同梱)
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これは10点満点。面白いです。

画面が3Dでダイナミックに動くので、一見、難易度が高そうに見えますが、実際やってみるとそれほど詰まることなく進んでいけました。数回失敗すると攻略法が見えてきて先に進めるようになるという絶妙のゲームバランス。

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おまけに同じところで何度も失敗していると"おたすけウィッチ"が現れます。話しかけてお願いすると、クリア直前までクリアしてくれます。ニュー・スーパーマリオブラザーズ・Wiiが難しすぎた人(私)も、これは楽しめると思います。

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クッパにさらわれたピーチ姫を助けるために、いろいろな銀河の星を冒険して回るという設定ですが、星のバリエーションが豊かで飽きない。巨大な3Dのキャラがうようよ動く。

2Pが純粋なアシスト役としてゲームに参加できるので、小さな子供も一緒にできるのも魅力です。

簡単解説DVD「はじめてのスーパーマリオギャラクシー2」が付属しています。WiiにはDVD再生機能がないので、別のDVDプレイヤーで見る必要があるわけで、賛否両論のようですが、ゲーム序盤にチュートリアルを長々と置くより、こちらのほうがゲームにいきなり入っていけて正解だったような気がします。

・ニュー・スーパーマリオブラザーズ・Wii
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/wii-1.html

Amazon検索専用アプリ 結果の絞り込み、ソート、ツイート可能 あま本(Amazonで本!)
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/net/se480845.html
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日常的にAmazonで本をさがす人におすすめ。

AmazonのWebサイトの検索機能も悪くはないのだが、大量に検索結果があると「次へ」でページ替えが必要で一覧性が悪かったり、絞り込みやソートが面倒だったりする。このソフトを使うと、Webの検索結果をすべて読み込んで、データだけを並べて見ることができる。書籍を網羅的に検索するのに重宝する。

○月○日以前のリリースは除外するという機能があって最近の本のみを表示出来るのがうれしい。


検索結果はエクセル上のデータのように、発売日、商品名、価格、出版社、値引き率などで並べ替えることができる。

人物名については、

・人物の関連書籍すべて
・人物の著作のみ
・人物についての本のみ

を区別して検索することができたり、"前の検索結果をクリアしない"をチェックしておけば、複数の検索結果をマージしてから、並べ替えて調べることができる。

文献データを使った研究支援に向いている。

気になった本をツイッターにつぶやく機能もある。

・ザ・堀ちえみブラウザー hori-day × Grani
http://www.fenrir.co.jp/grani/collaboration/horiday.html

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堀ちえみのウェブブラウザー。

こういうのってありなのか、そうか。

つまりカスタマイズされたブラウザーをインストールするようなユーザーというのが、80年代アイドルのファン層と重なっているということなんでしょうね。オヤジ層。ピンク色の聖子ちゃんブラウザーとか、紫色の静香ちゃんブラウザーとか、80sアイドル系ブラウザーってあったら、興味あるな。

で、この堀ちえみブラウザーは、デザイン以外に何が特徴かというと、

1 ホームアイコンのクローバーをクリックすると堀ちえみオフィシャルサイトへ直行
2 お気に入りバーには、堀ちえみさん関連サイトがあらかじめ登録
3 、「hori-day blog」の更新がすぐにわかるRSSリーダー

がポイント。ブラウザー内に3箇所、堀ちえみの写真が使われている。

フェンリル株式会社と松竹芸能株式会社のコラボであるそうだが、どのくらいの費用でこうしたキャンペーンブラウザーを開発できるのだろうか。

フェンリルのサイトを見ると、

「御社にてデザイン等制作できる場合、開発費用は頂戴致しません。」

とのこと。かなり安くできるということか。このブログのブラウザーでも作ってもらおうかなあ。私と強制的にインストールしてもらう友人ら10人くらいしか使わないだろうけど(笑)。

hori-day × Grani

・次に来るメディアは何か
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テレビ・新聞は消滅するのか?メディアはどう再編されるのか?アメリカの事例をみながら日本のメディア産業の将来を考察する。内容たっぷり。面白かった。

「ネット上で自分に関心のある情報ばかりを集めるデイリー・ミー(自分のための日刊新聞)現象は、社会の分極化を招き、民主主義を発展させていくうえで阻害要因になりうる」という意見が紹介されていた。検索もカスタマイズもリコメンドも、すべてデイリー・ミー強化につながる。次世代メディアの重要な要素だ。

しかし、デイリー・ミーで社会が分裂するとまではいかないのではないかとも思った。全員がデイリー・ミーしか読まないようになると、逆に広く全体を見渡すグローバル新聞を読んでいる人が大切になるだろうし、逆にデイリー・ミーにグローバルな意見を取り込んで読む人も増えるだろう。そもそも、いろいろな意見を持った人がいるということが、民主主義の前提だろう。

グローバルと日本のメディア再編の動きとしては、多分野に拡散して弊害が目立ち始めたメディア・コングロマリットから、メディア・コミュニケーション企業連合に絞り込んだ「メディアインテグレーター」へとシフトすると予想されている。そこでキーになるのが通信キャリアだと指摘されている。

「なぜ通信キャリアーがメディア再編成の核となるのだろうか?一見奇妙に感じられるかもしれないが、理由は簡単である。既存のテレビ局や新聞社に比べて圧倒的な資本調達力があり、技術開発力があり、何より近い将来、国民共通のコミュニケーション端末が次世代携帯電話、つまりスマートフォンになるとみられるからだ。」

私の場合、1日で一番長い時間接触しているメディアは、パソコンとスマートフォンだ。テレビでも新聞でも雑誌でもない。そして、スマートフォンの接触時間が確実に増えている。スマートフォンで知って、Webやテレビや雑誌を読むという行動も多い。

それからデジタルハリウッド教員としては、ここが気になったな。

「経産省が作った「コンテンツ産業の海外収支」という表を見ると、04年度輸出の稼ぎ頭はゲームの2327億円である。出版は176億円の輸出に対して475億円の輸入で、大幅な輸超となる。輸出部門は、漫画・アニメが中心だが、金額はまだ少ない。」

そう。ゲームにはもっと自信を持って力を入れるべきなのだ。ゲームをメディアにして日本の文化とコンテンツを輸出するということを本気で考えたらいいと思う。

で、そうしたデジタルコンテンツの学校デジタルハリウッドで次世代メディアセミナーを開催しますので、みなさん来てね。(すいません、最後、宣伝です)。

・次世代メディアセミナー The Future of Digital Contents 第二回 『雑誌メディアの近未来 デジタル化による変容と次世代ビジネス』
http://www.ovallink.jp/event/digital_publish2.html

・ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?
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「レム睡眠」を発見した睡眠研究の世界的権威ウィリアム・C・デメントが一般読者向けに書いた啓蒙書。睡眠とは何か、睡眠障害の原因、よい睡眠をとるにはどうすればいいか。

ウマ3時間、ネコ15時間、コウモリ20時間、ヒト8時間。寒冷地の小型動物ほど睡眠時間は長く、温暖な気候の地の大型動物は短い。保存しておくべきエネルギー量に比例すると考えられている。人間は結構大きいので、人生の3分の1を眠って過る。

本来は8時間くらい眠る必要があるのに、現代人は仕事に遊びに一生けん命で、睡眠不足に陥ってしまう。土日にたっぷり眠って解消と考える人が多い(私もそう思っていた)が、科学的には睡眠不足は負債のように蓄積するのだ。

「蓄積した睡眠不足のことを「睡眠負債」と呼ぶのは、それがお金の負債と同じで、いつか返済しなければならないからだ。負債額が大きいと、それだけ危険な影響も増大する。また負債がたまりにたまっていると、ほんの少し返済しただけで驚くほど状態が改善されるようだ。基本的に睡眠負債は圧縮できない。つまり、ふだん8時間眠っている人が、ある晩5時間しか眠らなかった場合、次の晩に不足分の3時間を足して11時間寝ないと、1日を快調に過ごすことはできないのだ。 睡眠負債は少しずつ蓄積していく。8時間の睡眠が必要な人が、平日は6時間しか眠れないとすると、2時間×5日で10時間の睡眠負債を抱え込むことになる。たとえ土曜日に昼まで寝たとしても、それだけでは足りない。」

睡眠不足は人間の生活にあらゆる悪影響を及ぼす。睡眠の取り方は科学的に考え直さないといけない。脳は2週間前の寝不足を覚えているそうである。この本には睡眠負債判定テストがついている。

ただし、眠りを効率的に得るには多少の睡眠不足が必要という話もある。たっぷり眠っている人はなかなか寝付けなかったりする。多少の睡眠負債があるとすぐ眠れるものだそうだ。私は常に寝つきがよいのだが、要するに慢性的な睡眠不足ってことなのだろうか...。

日常的に使えるノウハウとしては、短いうたた寝がある。たとえば徹夜仕事をしなければならないときはあらかじめ短時間のうたた寝をしておくと効果的らしい。コーヒーを飲んですぐ15分くらい眠り、カフェインが効き始めるころ起きるとすっきりするとのこと。ハックだなあ。

・快適睡眠のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-848.html

・ヒトはなぜ、夢を見るのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001062.html

・人はどうして疲れるのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000877.html

1Q84 BOOK 3

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・1Q84 BOOK 3
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物語で読ませる作家と文体で読ませる作家がいると思いますが、村上春樹と言うのは両方を兼ね備えているタイプの希有な作家ですね。

ノーベル文学賞にノミネートされるなど海外で高く評価されている部分と言うのは、主に物語の部分なのじゃないかなと思うのですね。海外の読者は翻訳で読むでしょうから。複雑な構造の物語が内包する同時代性やメッセージ性も含めて物語の力が海外でも話題になった、と考えます。大江健三郎氏と同じでしょう。

でも、幸運なことに日本語で読むことのできる私たちは文体を味わうことができます。一言でいえば「1Q84は文体を味わう快楽の本」だったなあというのが感想です。第3巻は読み終わるまでに2週間もかかりました。わざとゆっくり読みました。毎日寝る前に数章ずつ(3人の登場人物を一巡ずつ)読むのが本当に楽しみでした。終わってしまうのが悲しいほどの、明解でうつくしい日本語で書かれた複雑で不思議な物語。

でも、私はこの第三巻は読む快楽体験の延長のメディアとしては嬉しかったのだけれども、物語としては蛇足だったんじゃないかな、第二巻で謎を残したまま終わりでもよかったんじゃないの?と思います。謎を明らかにして安直に終わらせてしまった感が否めません。海外ではどう最終評価されるのか気になります。

セールス的には第3巻も100万部達成で本当に読んでいる読者が100万人いるらしいことには驚きです。メディアの作りだす宣伝ブームだけでは、遅れて発売の第3巻目は買わないでしょうからね。文学の市場がまだ健在っていうのは素晴らしいことだなあと思いました。100万人が読んだらもはや神話だ。

で、個人的には

物語:80点
文体:100点

かなあ。

・1Q84 Book1 Book2
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1140.html

・1Q84マップ
http://1q84.shinchosha.co.jp/map/
青豆と天吾の移動地図。この通りに散歩したら楽しそう。

6月11日はこんなイベントに出演します。本好きの人、きてくださいね。

特別ゲストは超大物の可能性あり。お楽しみに。

第1回ARGトーク「この先にあるブック・ビジネスのかたち-持続可能な「知のエコシステム」の構築のために」

津田大介 × 橋本大也 × 岡本真 × 仲俣暁生 × (特別ゲスト)

場所:丸善丸の内本店 3F 日経セミナールーム
http://www.maruzen.co.jp/corp/shop/marunouchi.html
日時:2010年6月11日(金)18:30開場/19:00スタート 20:30終了予定
参加費:1,000円(事前申込が必要です) http://bit.ly/c3CNbb
定員:100名 ※申込多数の場合、抽選とさせていただきます。
主催:ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)
共催:実業之日本社、丸善

【開催案内】

アマゾン、グーグル、アップルといった海外のプラットフォーマーによって、本のデジタル化が積極的に推進されていることを受け、日本でも昨年来から、電子出版関連のセミナーや勉強会が数多く開催されてきました。政府のいわゆる三省デジ懇の取りまとめも、この6月を目処に行われる予定で、電子出版関連の議論は一通り出尽くしたとの感想も一部では聞かれるようになりました。電子出版への興味や関心は、具体的で実践を伴ったものへと急速に移り始めています。

こうしたなか、ACADEMIC RESOURCE GUIGE (ARG) では、いち早くこの話題に注目し、2009年8月に第1回ARGフォーラム「この先にある本のかたち-我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」 < http://sites.google.com/site/argforumsite/ > を主催し、その後も登壇者たちと対話を続けてきました。今回はその一つの区切りとして、『マガジン航』 < http://www.dotbook.jp/magazine-k/ > 編集人の仲俣暁生氏のファシリテーションのもと、本をめぐる多様なステークホルダーのなかから、ネットを積極的に活用している書き手である津田大介氏と橋本大也氏にパネラーとして参加していただき、新たな情報環境のなかで、持続可能な「知のエコシステム」の構築のために、いま何ができるのかをテーマに、既存のビジネススキームにとらわれない、建設的かつ具体的な提案を行っていただく予定です。(当日までに、もう一名、特別ゲストの参加をご案内できるかもしれません)。

それでは、当日、会場でお会いできることを楽しみにしております。

アカデミック・リソース・ガイド株式会社

代表取締役/プロデューサー 岡本真

※当日はUstreamでの動画中継も予定しております。動画中継に関する情報は、パネラー/ファシリテーターのTwitterをご確認ください。

【パネラー】

□-津田大介

メディアジャーナリスト。早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事などを兼任。主な著書に『だれが「音楽」を殺すのか?』(翔泳社)、『Twitter社会論 - 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)など。

Twitter: http://twitter.com/tsuda

□-橋本大也

起業家。データセクション株式会社取締役会長、株式会社早稲田情報技術研究所取締役、株式会社日本技芸取締役、株式会社メタキャスト取締役。デジタルハリウッド大学教授、多摩大学大学院経営情報学研究科客員教授を兼任。主なに『情報力』(翔泳社)、『情報考学--WEB時代の羅針盤213冊』(主婦と生活社)など。

Twitter: http://twitter.com/daiya

□-岡本 真

アカデミック・リソース・ガイド株式会社代表取締役、プロデューサー。京都大学情報学研究科非常勤研究員、国立情報学研究所産学連携研究員などを兼任。インターネットの学術利用をテーマにしたメールマガジンACADEMIC RESOURCEGUIDE (ARG) を刊行。主な著作に『これからホームページをつくる研究者のために』(築地書館)など。

Twitter: http://twitter.com/arg

【ファシリテーター】

□-仲俣暁生

フリー編集者、物書き。本と出版の未来を考えるメディア『マガジン航』編集人。武蔵野美術大学非常勤講師、横浜国立大学非常勤講師を兼任。主な著書『極西文学論 West way to the World』(晶文社)、『ポスト・ムラカミの日本文学』(朝日出版社)、『〈ことば〉の仕事』(原書房)など。

Twitter: http://twitter.com/solar1964

・PARKER JOTTER ジョッター フライター ボールペン S1140312
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高級文具パーカーのブランドの中で、オールステンレスで最安値(私はAmazonで1349円で購入)のボールペンがこのジョッター フライターである。

1954年発売のパーカーの伝統的スタイル。高級感があるというよりも、安っぽくないこと、嫌味がないこと、それなりの品があることが超ロングセラーの理由なのではないかと思う。

いかにもボールペンです。一応パーカーですという顔をしている。

品はあるが個性がないというのも事実。個性がないことがこの製品の個性。

そういった意味では、企業やお店の受付においておくのに最適なボールペンである。

あるいは個性的なデザインの手帳やノートと組み合わせて使うのがよさそうだ。このシンプルさは、原色のカラフルなプラスチック素材や革素材の製品とも、相性よくおさまる。
ジョッター(Jotter)とは、何かを手早く書きとめておくという意味のJotからきている。メモ用のボールペンである。ちょっと軽量だが、書き味はパーカーのクオリティでちゃんと書ける。

人間の建設

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・人間の建設
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小林秀雄と日本数学史上最大の数学者といわれる岡潔の対談集。

薄い本だが内容はものすごく濃い。

対話から、どれだけ深くを読み取れるか、読者の力が試される高度に知的な雑談。

最初にあいさつの意味もあるのだろうが、岡は小林の批評文に対して、詩人の作品のようだとこんなふうに褒めている。

「岡 勘というから、どうでもよいと思うのです。勘は知力ですからね。それが働かないと、一切がはじまらぬ。それを表現なさるために苦労されるのでしょう。勘でさぐりあてたものを主観のなかで書いていくうちに、内容が流れる。それだけが文章であるはずなんです。」

名文の本質をさらっとこの数学者は言い当てている気がする。さらに理系数学者らしからぬ発言を連発して、小林の文系の領域の知との化学反応を仕掛けていく。

「岡 数学の体系に矛盾がないというためには、まず知的に矛盾がないということを証明し、しかしそれだけでは足りない、銘々の数学者がみなその結果に満足できるという感情的な同意を表示しなければ、数学だとはいえないということがわかったのです。じっさい考えてみれば、矛盾がないというのは感情の満足ですね。」

勘と感情、人間の知力の最も本質的な部分がこれなのだという話に強く共感。

終始、岡の方が変化球を投げることで議論をリードしているようだが、小林の安定した受け止めもあって、学問、芸術、酒、数学、文学、哲学と主題はめまぐるしく変化するが、緊張感を失わない知のキャッチボールが続く。

俳句について。

「小林 実物を知っていて読んだということでおもしろいのが俳句だね。そうすると、芭蕉という人を、もしも知っていたら、どんなにおもしろいかと思うのだ。あの弟子たちはさぞよくわかったでしょうな。いまは芭蕉の俳句だけ残っているので、これが名句だとかなんだとかみんな言っていますがね。しかし名句というものは、そこのところに芭蕉に附き合った人だけにわかっている何か微妙なものがあるのじゃないかと私は思うのです。」
小林の批評に対する考え方がここに見えてくる。

わかりやすく、わかった部分を取り出して紹介してみたが、実は読んでいて、含意がありそうだが、自分の教養不足で汲みとれていなさそうな発言がたくさんあった。一回読んだだけでは2人の会話の中の意味をまだ3分の1くらいしか読み取れていないような気がする。10年したら、もういちどじっくり読み返してみたい本だ。

いよいよiPad日本上陸というタイミングで、こんなイベントを企画いたしました。

お申し込みはこちら

http://www.ovallink.jp/event/digital_publish2.html

よろしくお願いします。

 

電子書籍セミナー雑誌出版社はデジタル化の波にどう対応するのか?
Kindle、iPad、iPhone、xperia、Readerなど、次世代メディアのテクノロジーが次々に登場する2010年のメディア業界。海外では雑誌のオンラインメディアとの統合や"フリーミアム"モデルによる新たなビジネス展開が雑誌出版社にとって、この大変化はチャンスなのか、ピンチなのか。

次世代メディアセミナー第2回は紙の雑誌、オンライン雑誌の編集長が集まって、2010年代の雑誌メディアのあり方について、カルチャー、ビジネス、テクノロジー他、それぞれの重要視する視点から、展望を語っていただき、参加者とともにメディア近未来を見通すイベントです。

講演者:
株式会社サイゾー代表取締役 サイゾー編集長 揖斐憲氏
株式会社ワイアードビジョン代表取締役 竹田 茂氏
元「マリ・クレール」編集長 池田稔氏

ナビゲーター:
小西克博氏 (富士山マガジンサービス顧問・編集長)
橋本大也氏 OvalLink 代表 デジタルハリウッド大学教授

各自が20分ずつ講演者の自身のポジションから「2010年代の雑誌メディア」について、それぞれの注目や視点をご講演いただき、その後1時間程度の全員参加のパネルディスカッションを行う予定です。


■日時:2010年5月31日(月)、19:45開場(20:00開演)
■場所:デジタルハリウッド大学、メインキャンパス(秋葉原・ダイビル7F)
千代田区外神田1-18-13秋葉原ダイビル7階
http://www.dhw.ac.jp/access/
■定員:100名
■会費:3000円、デジハリの学生さんは無料
■参加方法:下記お申し込みフォームより登録してください。どなたでも参加できます。

お申し込みはこちら

http://www.ovallink.jp/event/digital_publish2.html


■主催:先端研究集団オーバルリンク&デジタルハリウッド大学・大学院

【参加者のプロフィール】
株式会社サイゾー代表取締役 サイゾー編集長 揖斐憲氏
編集長インタビュー
いびただし 1972年生まれ。専門学校在学時より、雑誌「ワイアード」(同朋舎出版)編集部でアシスタントとして従事。
98年より、同誌編集長が立ち上げた(株)インフォバーンにて、「サイゾー」の 編集に携わる。02年より、同誌編集長。07年に㈱インフォバーンより独立し、(株)サイゾーの代表取締役も兼務。「日刊サイゾー」など、ウェブメディアも展開中。

株式会社ワイアードビジョン代表取締役 竹田 茂氏
日経BP社でのインターネット事業開発を経て、04年にスタイルを設立、Webコンサルティング業務に携わる。07年4月、ワイアードビジョン代表取締役に就任。

元「マリ・クレール」編集長 池田稔氏
1961年生まれ、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
流行通信社(現インファス)に入社。雑誌「流行通信」の広告担当を 経て、世界文化社に転職。「MISS」「家庭画報」「メンズ エクストラ」 の編集部に在籍。2000年「MISS」の編集長に就任するが、3ヶ月で あっさり退任。縁あって角川書店に転職。「マリ・クレール 日本版」 編集長に就任。2004年「マリ・クレール」契約切れとなったが、その まま角川書店にとどまり、2010年3月まで、書籍、ムック担当。
現在、 いくつかの編集プロダクション、広告代理店と契約し、編集プロデュー サーとしてスタート。最近話題の《電子書籍》について、某大手IT企 業のアドバイザリースタッフとして参加。

小西克博氏
FujiyamaFujisan on twitter
富士山マガジンサービス顧問・編集長
大学卒業後に渡欧し編集と広告を学ぶ。共同通信社を経て中央公論社で 「GQ」日本版の創刊に参画。 「リクウ」、「カイラス」創刊編集長などを歴任 し、富士山マガジンサービス顧問・編集長。著書に南極・北極を旅した「遊覧の 極地」など。

橋本大也氏
http://www.ringolab.com/note/daiya/
オーバルリンク代表。データセクション株式会社取締役会長。起業家、ブロガー。デジタルハリウッド大学教授。多摩大学大学院客員教授、早稲田情報技術研究所取締役などをつとめる。著書に「情報力」(翔泳社)「Web時代の羅針盤213冊」(主婦と生活社)「アクセスを増やすホームページ革命術」(毎日コミュニケーションズ)などがある。

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お申し込みはこちら

http://www.ovallink.jp/event/digital_publish2.html

よろしくお願いします。

本イベントはデジタルハリウッド大学・大学院のDHGSアカデミー教育活動の一環として開催しています

・ミドリ/midori MDノート[A5] 方眼罫
ミドリ/midori MDノート[A5] 方眼罫 【文房具ならワキ文具】

"美人過ぎる"が何かと流行っていますが、これは"使いやす過ぎる"。

好みは人によって違うわけですが、私にとっては、こんなに使いやすいノートははじめて、というくらい今、お気に入りの仕事用ノート。会議でメモを取る、ひとりでアイデアを練る、カフェで読み返すのに日々、メインとして愛用中。

文字が書きやすく裏写りしない「MD用紙」のノート。

まるで普通の本のような大きさ、装丁、質感。

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表紙には昔の本のようにパラフィン紙のカバーがかぶさっている。パラフィン紙はカバンに出し入れを繰り返すと遠からず破れるので、それが嫌な人は別売り専用カバーをつけるとよさそう。パラフィンを取った後の紙もかなり味があるのですが。

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このノートは上質の紙で176ページとやや厚めだが、丁寧な糸かがり綴じにより180度開いて固定できるのが使いやすい。デザイン的にアクセントにもなっている、しおりの紐も、どこまで書いたか一発でわかって便利なのだ。

・ネット検索革命
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検索の未来についてここまで深く語れる人は世界に何人いるだろうか。感動。

「検索知識人」と「ソーシャブルサーチ」という概念に特に啓発された。

検索知識人とは、

「技術面でのスキル、専門領域の知識、概念的な鋭敏さ、この三つが「検索エリート」を作り上げる。最良の検索者は、検索エンジンの適用範囲や、作動の仕方や、長著と短所などを理解している。さらに、どう検索すれば効率的なのか、「深層ウェブ」を掘るために多様な垂直型エンジンをどう使いこなすか、助言してくれそうな専門知識を持った人をどう探すか、心得ている。個人的な社交関係や、オンラインでのフォーラムを使って、専門知識を得ることができるだろう。特定の個別の問題を検索するだけではなく、継続的に検索を行うことで、あるトピックについて自動的にデータを引き出し、新たに見つけた情報を「絵」にはめこんで、より大きな全体像を描き出せる(Calishain 2007)。」

検索すればわかる、とか、あの人に聞けばわかる、いうことは多い。従来はそれは知識とはみなされなかったが、ネットを介して知識のデータベースや人脈にいつでもアクセス可能になった今、即座にそうした知識を引き出すことができる能力は、ほとんど知と同義である。将来、脳にコンピュータや通信装置がインプラントされたら、オーガニックな脳で考えた事なのか、ネット脳で考えた事なのかは、外部から見分けがつかなくなるだろう。検索知識人はネットを外部脳とする時代のさきがけなのだと思う。

そして、ソーシャブルサーチとは、「手段としての検索」から「明示的・暗黙的な人間関係の構築」を指す。従来のソーシャルサーチより一歩踏み込んだ概念といえる。

「英語では「サーチ・パーティ」(捜索隊)という言葉が、何百年も使われている。この言葉は、検索の社会的な性質を思い起こさせる。「ソーシャブル・サーチ」も「サーチ・パーティ」の一種と考えるのが適切だと思う。新しいアイディア、新しい娯楽、新しい知識を一緒になって探すこと。より集まって新しい知識を共有すること。そして、将来の検索を向上させるための新たな社会構造。検索はこれまでも常に、知識の評価だけではなく、社会的な創造にも依存してきた。社会のニーズに応える検索のためには、人々と情報を結びつけるだけでなく、人々同士を結びつける必要があるのだ。検索エンジンは個人から知識への道筋を提供するだけではなく、知識をつくり出す社会構造や集合パターンの変化までもたらす機動力となるのである。」

これは日々実感するところだ。たとえば私は、ブロガー同士のネットワーク、経営者同士のネットワーク、研究者同士のネットワークを持っている。Skypeのチャットルームやメーリングリストには日常的に、時事に対する意見、参加者の鋭い質問と的確な答えが集まっていて、公開ウェブと同じくらい貴重な情報源になっている。

もちろん、誰かの質問に答える際には公開ウェブの検索エンジンも使うわけだが、それぞれに得意分野とがある。多様な専門を持つ検索知識人が寄り集まったサーチパーティの一員になるということが、とても大切なことになってきたと感じる。

この本には、検索知識人、ソーシャルブルサーチの他にも多くの啓発的な概念が示されている。検索の未来を考えてみたい人におすすめ。

・競争と公平感―市場経済の本当のメリット
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競争と公平感に関する経済学者の論考集。面白い。

「貧富の格差が生じるとしても、自由な市場経済で多くの人々はより良くなる?」

市場経済への信頼を問う、この質問に対して日本人は49%しか賛成していない。アメリカでは70%以上が賛成している(Pew Research Center)。日本の賛成の率は主要国の中でも顕著に低い。日本人は貧富の格差がつく競争を嫌う。

国際的な調査によれば資本主義への支持と相関するのは「人生での成功を決めるのは運やコネではなく勤勉である」という価値観であるそうだ。日本では、人生での成功を決めるのは運やコネである考える人が、90年で25%、95年では20%と少数派だったのに、2005年には41%と急増している。アメリカでは22.6%に過ぎない。

年齢別にみると若い世代ほど、この傾向は強い。長期の不況によって、努力しても就職できず、出世や成功もできない状況が続き、若年層の価値観に影響を与えているのではないかと著者は分析している。

所得はどう決まるべきか?を問う調査もある。

「アメリカでは、「学歴が所得を決定する」と考えている人の割合は77%であるのに対し、日本では43%にすぎない。また、アメリカでは「才能が所得を決定する」と考えている人が60%であるのに対し、日本では29%である。アメリカ人が重要だと考えているのは努力、学歴、才能の順番であるのに対して、日本人は努力、運、学歴の順番である。」

両国ともに1位は努力だが(アメリカ84%、日本では68%)、アメリカでは学歴と才能で所得が決まるべきと考える人が50%を超える。日本では10から15%にとどまる。日本の競争力が低下している理由、競争的な市場を形成することに失敗している大きな理由が、こうしたマインドの変化にあるのかもしれない。

最近、学生と会話していて、中学や高校でのテストの答案の返し方の違いが話題になった。私の子供時代は、テストは成績順で返していた記憶がある。少なくとも90点台や満点の生徒は誰なのかわかった。これはいまどきの、ゆとりの学校では考えられないことらしい。学生に驚かれてしまって私が驚いた。難関校の学生なのに。

この本は新書としては盛りだくさん。男女での競争マインドの違いや、薬指の長さと社会的成功の相関など、身近で興味深い話題から、国際的な統計をベースにした競争と公平感の比較、そして働きやすさの研究、最低賃金や外国人労働者問題への政策提言など、多くのわかりやすく、示唆に富む論考がいっぱいある。

・「1冊10分」で読める速読術
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いわゆる「飛ばし読み」でなく最初から最後まで「全部読み」で、

1分間に1万字以上を読む速度、1ページを3秒、1冊を10分で読む計算

で本を読めるようになるという速読メソッドの本。

私は多読だけれどもいわゆる速読はできないので、興味津津で読んだ。

まず「速読眼」そして「速読脳」をつくる。

「速読眼」とは、

1 眼力 まばたきが少ない
2 弾力 高速で目を動かす
3 リズム 深く集中できる 
4 速度 自在に速度を変えられる
5 合焦力 文字に焦点を合わせる

という視覚機能を強化すること。

「ゆっくりとしか読めない人に多く見られるのは、まず文章の1行を読んだら、次の1行に移る前にひとやすみしてしまうのです。」。速読するは「行末を読んでいるとき、次の行が見えている必要がある」そうで、そのための練習フォーマットが紹介されている。行の上端と下端の1文字目だけを見る練習などを繰り返すことで、行戻りがない読み方ができるようになるという。実際、速読者は視野が広いという研究もある。

そして交通標識を一瞬で理解するように、文章を読めというアドバイスも興味深い。速く読める時は確かに単語や文章をイメージ的にとらえているというのは本当のような気がする。音声化しないから速いわけでもある。

「瞬間的に理解できる文字の量を増やしていけばいいのです。まず単語から始まって、フレーズ、文章、段落を理解できるようにし、さらに最初から最後まで速読して、普通の読書と同じように理解できるようにトレーニングしていけばいい」

よく読む分野の本というのは、これができるようになっているから、速く読めるのだろう。

さて、私はこの本を読んだだけで練習していないので、別に1冊を10分で読めるようになったわけではないのだが、重要なポイントは把握できた気がする。読書という行為はフィジカルな側面があるから、スポーツ同様にとらえて、科学的な練習によって、そのスピードを上げていくことができるはずだ。「速読眼」づくりは挑戦してみる価値がありそうに思った。

ただ、速読眼ができても、本の内容が難しければ理解は遅くなるわけだし、どんな本でも10分でとはいかないだろう。天才秀才やデキル人がみんな速読かといえばそうじゃないわけだし、速読術を習得しても曲芸、大道芸みたいに終わってしまうかもしれない。目的意識を持って取り組むといい術だろうなあ。

ちなみに著者の勧める「速読脳開発プログラム」はこちら。
http://sokudoku.co.jp/program.html

・私たちはいかに蟹工船を読んだか
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読書感想文というものに興味があって研究として読んだ本。

2008年、2009年の蟹工船ブームに拍車をかけた一要素として小林多喜二の出身校である小樽商科大学と白樺文学館多喜二ライブラリー共催の「Up To 25『蟹工船』読書エッセーコンテスト」(2008年1月開催)があったようだ。

このイベントは「30分で読める・・・大学生のためのマンガ蟹工船』(東銀座出版社)と、その原作小説「蟹工船」が評論対象で、応募資格は25歳以下の青少年対象のUpTo25部門と制限がないネットカフェ部門の2つがあった。この本には選者(精神科医 香山リカ、島村輝女子美大教授、由里幸子朝日新聞前編集委員など)の講評と共に120編の応募作の中から選ばれた優秀作が収録されている。

他人の読書感想文というものをのぞいてみたくて手に取った。

予想通り「根本的に今までも何も変わっていないのではないか」「私の兄弟たちが、ここにいる」「現代の「浅川監督」とは一体誰か」というように、プロレタリアート文学に対するものとして「正しい」連帯的憤り系の反応は多い。

基本的には「他人に干渉しない、ひたすらに自己責任に縛られたまま出口のない孤独の日々をふわふわと泳いでいる。そうだ、私たちは、支配者に闘いを挑む怒りを剥奪されている!」という風に、現代社会をいかにして、もうひとつの蟹工船に見立てるかのコンテストなのでもあった。

しかし、一方で「このエッセーは私のようなものが書くより、貧しくて一生懸命バイトしながら奨学金を貰って大学行って勉強している人が、「みんなで世界を変えていこう」と呼びかけるようなものを期待していると私は書く前考えていた。私もウソをついて、そういうものを書こうと思ったが、できるだけ本当のことを書くことにした。」というような、淡々と状況を客観する文学部生もいた。

登場する労働者たちの性欲に着眼して評論した人、チャップリンの映画との共通点を挙げた人、仮想テレビ番組内の鼎談形式にした人。選ばれているだけあってみんな実にいろいろな文体芸風を編み出している。10代前半とは思えぬ深い内容を書いてくる早熟な少年もいる。

多くの応募者はマンガと小説の両方を読んでいるが、特にマンガ読書体験に直截的で強い印象を持った書いている人が目立つ。彼らは小説を後で読むことで一層の理解を深めている。こうした反応を見るとやはりマンガ版の存在が今回のブームの大きな原因だったと言えるのじゃないかと思った。

・蟹工船・党生活者
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-754.html

・著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」
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電子書籍ブームによって、またにわかに著作権ブームである。

この本は、まとまっていて、現状をアップデートしたいIT業界人にもおすすめ。

昔、仕事でテレビの番組情報をWeb上で扱う仕事をしていたとき、その業界のルールに戸惑った。テレビ番組表、番組内容、出演者情報、それに関するクチコミなどテレビ関係の情報というのは、Webで扱うに際して権利関係が明確でないものが結構あった。専門家に聞いても、あなた方がやりたいことは法的には大丈夫なはずだが現実ではケースバイケースだと言われた。つまり、法的権利というより業界の慣習や力関係で、情報をどう扱うべきか決まっているように感じた。

「著作権の適用範囲をめぐって、補償金や保護期間延長といった激論がつづく一方で、法律の外に疑似著作権と呼ぶべき情報の囲い込みが数多く生まれています。そのなかには、もっともな理由のあるものもありますが、いわば「言ったもの勝ち」「権利のようにふるまったもの勝ち」と呼べる例も少なくありません。」

というような意見がこの本にも書かれている。理論的には著作権ではないが、社会では事実上、著作権に近いような扱いを受けているものとしては、肖像権、パブリシティ権、報道の中での商標や芸能人の名前などが挙げられている。本当は権利がないのに疑似著作権として主張されている領域が、実際問題、結構あるわけだ。

日本版"フェアユース"でコンテンツがもっと自由に使えるようになるという話も多いが、著者は現実的に、

「もっとも、仮にフェアユース規定が導入されても、できるのはかなり限定された利用にとどまるでしょう。アメリカでも条件はそれなりに厳しく、1 非商業的・教育目的か、などの「利用目的」、2 「利用される作品の性質」、3 利用された部分の「質と量」といった条件に並んで、4 その利用がオリジナル作品に経済的損失を与えないか、が重視されます。フェアユース規定で何でも可能になるような論調を時折見かけますが、それは誤りです。」

と書いている。

グレー領域の明確化はされていくべきだが、現在の多次的創作の扱いのように、「微妙に関係者の価値観やビジネス上の事情が反映され、バランスがはかれれているケース」は、「やわらかい法律」としての運用を残すのもひとつのやり方だと著者は書いている。

結局、世の中全体の考え方が変わらないといけないのだと思う。著作権とは何かを、普通の人含めて社会全体でもっと理解する必要がある。著作権制度は既得権者の利益を守るよりも、将来の社会全体の利益を最大化に向かう方向で、変わっていくべきだと思う。具体的には独占的な構造を崩したり、創作の主な主体である個人の価値創造が、フィードバックを受けて加速するように、お金を巡らせるべきだ。

著作権ブームは議論のいい機会になる。


・REMIX ハイブリッド経済で栄える文化と商業のあり方
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/remix.html

・著作権とは何か―文化と創造のゆくえ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2005/05/post-237.html

・ラーメン屋の行列を横目にまぼろしの味を求めて歩く
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もう食べることができないまぼろしの味についてのエッセイ集。面白い。

昔はよかったとぼやく老人のつぶやきなんだけれど、名文がいっぱいだ。

「そもそもラーメンは、厳選された素材がどうのという料理ではない。どこかウソっぽいのに、しみじみと旨いというキラキラとした秘密を持っていた。その「悪」の魅力が、ラーメンの精神的スタンスだった。それがあってこそ社会の荒涼とした現実と自分との関係を噛みしめることができる、実存主義的食べ物であった。」

まず標題のラーメン論が深いのである。今のラーメンにはないラーメンの本質が語られている。3丁目の夕日の中のラーメン論というかなんというか。70年代、私の子供の頃のラーメンって確かにそうだったなと思い出す。

「キザな言い方をすれば、ラーメンには吹きだまりの詩情があった。悲しいのについつい口ずさんでいる街の歌がある。それがラーメンの味なのだ。あーあ。スープから東京の哀しさが匂った昔のラーメン。もうまぼろしになってしまったのだ。」

サントリー学芸賞の作家だけあって名文だ。1949年に新橋の美術商の長男として生まれて、銀座や東京の旨いものに親しみ、その後中国やパリで食べ歩きをした人なので、各国料理文化への造詣の深さ、舌の確かさは信頼できそうだ。しかし、この人の魅力は、そういうメインストリームの評論ではなくて、話が進むにつれて、だんだんジャンキーな味覚に偏っていくところにある。

鰻丼から鰻をよけて、焦げたにおいと脂が覆ったタレのかかったご飯だけ食べるのが好き。中華料理店でおみやげにやきそばを買ってきてアルミホイルに包んだまま冷蔵庫で24時間寝かし、ラードが白く固まっているがソバに味がしみ込んだ状態が好き。カツ丼も天丼も蓋をして熱いご飯で蒸されてシネッとしたのが好き。ああ、なんだかよくわかるんだけど偏った好みを熱弁する。

「染み込んだもの。それがまた染み込んだ先の味と混じり合って、またまた別のものに染み込んでいく。その染み込みは己の温度によってなされる。そのなんとも下世話な感じ。下品で慣れ慣れしい。しかし人を納得させる旨さ。いい湯加減の風呂にどっぷりつかった安心感。そんな下手な味に私は「下手味」と名をつけた。」

食通の下手味を紹介するというのが著者の真骨頂なのである。

で、そうした著者のお気に入りはしだいにまぼろし化している。現代のグルメブームには批判的な言及も多い。たとえば、ネットのクチコミについては次のような鋭い指摘がある。

「そのうち一大発見をした。驚くべきことにほとんどがランチへの評価だったのだ。つまり昼飯食べに会社の外に出た、もしくは主婦が食べ歩きをしたその体験記であり感想なのだが、それがグルメ評論家の記事のように、高所から料理の出来不出来がチェックされ採点されている。そうですか、世の中の飲食店はすべてランチだけで評価される時代になっていたのですか。」

そういえば食べログもそうだが、ランチの話ばっかりだ。夕食でちゃんといいものを食べたいとなると、信頼できる情報はまだネットには少ない。食べ歩くうちに舌が肥えてくると、世評の高さよりも自分なりの価値観の味を追求したくもなる。そういった大人のグルメ情報はネットのクチコミサイトにはまだ不足しているなあと思う。ひとつの評価軸で評価をしてくれる、こういうグルメ評論家はありがたい。ま、まぼろしの味ばかりで実際には食べられない話が多いんではあるけれど。

・ポケット付きノートブックノート・A5/ストレージドットイット

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ビニール製の表紙がファスナーで開閉できる収納になっているA5ノートブック。

筆記具や小さめの書類を入れて持ち歩けるので、会議での移動には大変便利だ。

それから、このノートは機能性もさることながら、収納にこだわりのモノ、写真や雑誌の切り抜きなど、自分らしさのアピールを入れることで、表紙を個性的にデザインできるのも魅力だ。

中身のノートは一般的なA5ノートと入れ替えることができる。
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中身のノートは一般的なA5ノートと入れ替えることができる。

なお、裏表紙にはペンホルダーとカードホルダーがついている。ファスナーを開けるのは面倒なので、メインの筆記具はここにつけておく。カードホルダーには名刺を収納できる。完璧。

・孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか
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人間の社会的つながりと孤独感に関する、社会学、心理学、医学、脳科学、経済学などのアプローチによる多面的な研究。

「1985年、アメリカ人の代表的サンプルに「心を許せる親友は何人いますか」と尋ねたとき、いちばん多い答えは3人だった。2004年、再び同じ質問をしたとき、いちばん多い答え(全回答の25%)は、ゼロだった。21世紀のアメリカ人の4人に1人が、何でも包み隠さず話せる相手は一人もいないと答えたのだ。」

21世紀に増大する孤独感は、あらゆる不幸の源になるという事実を、多くの研究結果が示している。孤独感を感じている人は、病気になりやすい。集中力や判断力が損なわれる。老いが早まる。社会的な成功と遠ざかる。鬱になりやすい。悪影響のリストは何十も続く。

他人から拒絶された時の脳の反応は、身体的な痛みを感じた時の脳の反応と部位を共有しており、脳にとって寂しさは痛みなのだそうだ。人間のような社会的動物は、社会的つながりを失うと生存が脅かされる。だから、孤独感を感じる能力は、遺伝子に織り込まれいる。

社会的つながりには、個人的なつながり(近しい人間に支持される)、関係的なつながり(より広い範囲で友人や親族と親交を持つ)、集団的なつながり(特定の集団への帰属意識を持つ)の3つの側面があるとされる。3つは密接に関係していて、どれを欠いても問題が生じる。

そして実際に孤立しているかどうかよりも、その人が孤独を感じるかどうかの方が本質的な問題だと著者はいう。結婚していようが、ファンに囲まれていようが、主観的に孤独をストレスと感じてしまうならば、悪い影響が出る。孤独の感受性は遺伝するということもわかっている。

研究によると孤独感は人間の幸福度にも社会的成功にも多大な影響を及ぼす。

「私たちの行った縦断分析によれば、孤独感の低さと収入の増加はどちらも幸福感の増大と関連があるものの、収入の増加は幸福感の増大には貢献せず、孤独感を減らすこともない。じつは、両者の関係は逆なのだ。幸福感の増大は、社会的なつながりに対するポジティブな効果を通して、収入の増加に貢献する。幸せな人は孤独感が減り、孤独感が低い人はより多くのお金を稼ぐ傾向にある。」

統計的にみると、孤独な人は収入が低く不幸になり、孤独でない人は収入が高く幸福になるのだ。

社会的つながりにおいて、ポジティブな面を評価することが、大切だということが、研究によって示されている。たとえばパートナーが昇進したときに共にに喜びあうことは、パートナーが昇進しそこなったときに気遣うよりも重要であり、夫婦が前途は愉快で楽しいという見通しを持つことが、苦しい時に慰めあうより重要になるという。

日常的に幸運や達成をお祝いする習慣は、幸福な人生の秘訣ということか。

・知識人として生きる ネガティヴ・シンキングのポジティヴ・パワー
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知識人であるために敢えて宗教色の強いインテリジェント・デザイン論を、裁判において支持する証言者をして物議を醸した(冒頭でなぜ支持したか釈明している)という、ユニークな経歴もある社会学者・哲学者が書いた知識人論。

そもそも現代において「知識人」と言う言葉はネガティブにもとらえられがちだが、本書が言うように、従来の知識人の果たしてきた役割に、「市場」がとってかわるようになったことと関係があるだろう。

「変わったのは、かつては責任を持った傲慢な一部の人たち(検閲者)によってなされていた「決定」が、今では多数の無邪気で無責任な人たち(消費者)の間に拡散してしまったということである。」

知識人に変わって「起業家」は市場に人々が求める商品を提示して革命を起こす。いまや知識人なんかより、グーグルやアップルの方がよほど革命的なのだ。では知識人なんてものは不要になってしまったのだろうか?。

「知識人とは、時勢における政治の実践者だ。彼等は後の世代をその支持者とする。彼等の本来の役割は、あらゆる優勢なものは常に一時的であり、覆されるものだということを示し、収支バランスを保つことである。つまり、知識人は、一般的な政治の問題において、その矛先を弱いものではなく、強いものに向けなければならないということだ。すなわち強いものを小さくするか、弱いものを大きくするかのどちらかだ。要するに、知識人は非神話化の実行者あるいはソフィストになることができる。」

著者の主張を、グーグルやアップルの神話を非神話化する役割としてこそ知識人は必要という意味に読んだ。起業家にはそれはできないことなのだ。

「...ある知識の正確な意味は、その創成の時点では、必ずしも完全には把握されていないので、知識生産に最も多く投資する人が、その主な受益者とはならないこともあり得る。それでも、これらの「労せずして稼ぐ」受益者を排除しようとすれば、なお高くつくことになろう。この逆説的な状況は、経済学者が知識を「公共財」と呼ぶ場合に意味されているものを捉えているわけだ。」

いかにも「知識人」らしく、言い回しが凝っていて、全体的に難解な書物だが、冒頭でこの本が言いたいことはやさしく要約されている。つまり、以下のようなメッセージだ。

知識人は、

1 自分自身で評価する能力はきちんと持ったままで、しかし、ものを多面的に読めることができるようにしよう
2 どんなメディアにおいても、どんな思想内容をも、自由に伝えることができるように、自らを鍛えよう
3 どんな論点も、完全に違っているとか、完全に無視できる、などとは考えないようにしよう
4 誰かの意見に対して、自らの意見を言うとき、それを強化するのではなく、むしろ、反対のバランスをとるように計らおう
5 公的な議論では、真実に対しては粘り強く論じ、しかし誤謬に関しては寛容に許容しよう

という志をもつ人であり、それは絶対的な真理を確定させる科学者や、世にでて意見を言うことがない哲学者などともスタンスが異なると定義する。

ネガティヴ・シンキングのポジティヴ・パワーという副題がついているが、実際にいると同時代的には「嫌な奴」であろう。戦争しようと皆が熱くなっているときに、一人冷静に反戦を主張できる人のことだ。だが派手なパフォーマンスはしないから目立たない。大変に損な役回りだろうし、どうやって生きていけばいいのだろうか?。著者は「知識人についてびよくある質問」として問答集でそうした疑問に対して答えている。

スペシャリストの時代から再びジェネラリストの時代へ。絶対的な一つの真実ではなく、社会における「真実全体」を追い求めよう、というメッセージは、グローバリズムとダイバシティがせめぎあう現代において、知の担い手のあるべき姿のひとつを提示している
ように思った。

・知識人とは何か
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/01/post-517.html
・知識の社会史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1069.html
・インターネットはいかに知の秩序を変えるか? - デジタルの無秩序がもつ力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/post-1210.html

・SONY デジタルHDビデオカメラレコーダー CX370V
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子供の卒園&入学を機に、6年ぶりにビデオカメラを買い替えた。

かなりリサーチした結果、最終的に決めたのがこのCX370V。

・広角
動画で29.8mm(*2)、静止画では27.4mmという広角撮影

・軽い
約370g 本体付属バッテリー使用時。メモリー64ギガ内蔵。

・手ぶれ補正
手持ちで歩きながら撮ると、前の機種では映像酔いしそうなほど大きなブレがあって鑑賞にたえなかったが、CX370Vでは気にならないくらいブレが小さくなっている。6年の技術進歩の大きさを感じる。

が決め手となったポイント。購入後によかったと思った機能は、

・スマイルシャッター
写体の笑顔を自動判別して写真を撮影する。動画を撮影しているだけで、笑った顔の写真ばかりをきれいに残せる。

・GPS
動画や写真の撮影時に位置情報を記録。たくさん動画や静止画を撮影すると、ラベルをつけ忘れて、何の動画かわからなくなる。従来は撮影日時に加えて場所まで分かれば何の動画かほぼ特定できる。

・静止画撮影
ホームユースではビデオの静止画機能はおまけとは言えないと思う。気楽な行楽にビデオとカメラの両方を持ってはいかないからだ。このビデオは静止画カメラとしても使いやすい。

ちなみに動画モードで撮影した時(動画撮影中でもOK)と、静止画モードで撮影した時では写真のサイズが異なる。下は先日、金閣寺で撮影したサンプル。

・動画モードで写真撮影(3072 x 1728) 530万画素相当(16:9)
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・静止画モードで写真撮影(3072 x 2304)  710万画素相当(4:3)
DSC00190

ちゃんと撮りたいときには静止画モードで撮るべきだ。このほか動画から静止画を抽出することもできる。

なお、このビデオカメラはGPSを内蔵しており、写真には位置情報が埋め込まれるので、Flickrにアップロードすると自動的に「Taken in Kyoto-shi, Kyoto Prefecture 」というタグがついて京都の写真として整理された。

発売直後に買って数カ月使っているが、不満点としては、

・標準設定では晴天時にシロ飛びしやすい気がすること
・体育館内での撮影で開始時のホワイトバランス検出が間違うことが多かった(しばらく撮影していると自然なバランスに調整される)

かな。全体としては大満足ですが。

なお、付属ソフトウェアによりYoutubeへのアップロードなどが簡単にできる。

・メーカーの公式サイト
http://www.sony.jp/handycam/products/HDR-CX370V/

千年樹

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・千年樹
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この本は今年のベスト10に確実に入るなあ。面白い。傑作。

関東地方の山地にある樹齢千年のくすのきの巨樹。

1000年の間に巨樹の下で繰り広げられた人間たちの短い生のドラマを8つの連作短編で語る。時代も立場もまったく異なる登場人物たち数十人がいる。山に逃げた武士、自殺を考える中学生、女をさらった山賊、ドライブ中の家族、愛人と待ち合わせた娼妓...。よくここまで多様な設定下の登場人物たちを描き分けられるものだなあと著者の筆力に感嘆する。

器用なだけでなくて、8つの話がからみ合って群像劇としての深みがでているのも素晴らしい。

8編とも現代の登場人物と過去の人物の生き様が呼応する形で話が進む。死を考えて巨樹の下を訪れる動機は、昔と今では背景は異なる。一方では戦に負けて死ぬものがあり、もう一方ではいじめに耐えかねて自殺しようとしているものがいる。いろいろな生き方があるが、ひたむきに生きる人間の悲しみ、苦しみ、切なさが、時代を超えて共通するものとして浮かび上がってくる。

この連作短編は1000年に渡る長いスパンだが、巨樹を中心にした狭い地域の話なので、登場人物や設定が各話ですこしずつ重なっていて、ああ、あの話はこうつながったか、あの人はその後こういう人生を歩んでいたのか、とパズルを解くみたいな面白さもある。
先日倒れてしまった鎌倉八幡宮の大銀杏は、実朝暗殺の舞台ともなったと言われ、樹齢千年と言われるが、まさにこういう歴史を見てきた樹木だろう。この著者にぜひ鎌倉の大銀杏編も書いて欲しいなあ。

・天然ゴム製で金属ケース入り高級消しゴム SEED SUPERGOLD HIGH CLASS ER-M01
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店頭で見て衝動買いした。

こんなに小さいのに上質な箱入りで金属ケースがついている高級消しゴム 500円。

普通の消しゴムなら10個は買える値段だ。

でも、手に取ってみると質感で納得する。

昔ながらの天然ゴム使用ということだが、機能的には現代のハイテク消しゴムの方がよく消えると思う。実用的には普通の消しゴムである。だが、この高級消しゴムを持つ喜びは大きい。じっくりと眺めたり、人に見せびらかしたくなる。

まあ、実用性は私の場合どうでもいいのだ。だって消しゴムはほとんど使わないのだから。

子供へのご褒美にもよさそうだ。

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このシードというメーカーはユニークな消しゴムをもうひとつ扱っている。

1万円の消しゴム レーダー S-10000。

こちらはなぜ高いのかというと大きさがでかいからだ。

・レーダー S-10000
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普通の消しゴムの120倍。重さは2.2キログラム。

ショップいわく「ビンゴの景品にでも」とのことだが、「これで恥ずかしい過去をキレイに消しちゃいましょうね」とか言って受賞者に渡すのだろうか。それにしても1万円、贅沢なジョークだなあ。

・超ビッグサイズ消しゴム レーダー S-10000
http://www.seedr.co.jp/big/s-10000.html

メーカーのサイト。なるほど枕にしたり、厄除けにまつったり、ですか。

・もう一度見たい!「科学」と「学習」
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まだかな まだかな 学研のおばちゃん まだかな

昨年、惜しまれつつも休刊となった学研の「学習」(1946年創刊)と「科学」(1963年創刊)。最盛期の1979年には両誌合算で670万部という大部数を誇った。私も愛読していて、懐かしくてたまらず購入したメモリアルムック。

復刻ミニふろく「人体骨格モデル」と「5年の科学」の豆本付き。

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国立天文台天文情報センター長の渡部潤一氏がこんな文章を寄せている。

「小学校高学年になると、実験より机上の勉強で知識を得る入試対策がメインになります。それはそれで大事な側面ですが、今の教育の中に、手を動かして物を作る喜び、原理を知る喜びに繋がるカリキュラムがもっとほしいですね。それこそ、国が『科学』と『学習』に補助金を出して、年に1回でいいから子どもたち全員に配れたらいいなと思います。例え、99%が無駄になっても、1%でも面白いと思った人が、新しいアイディアでクリエイトする人に育てば、新しい技術や価値観を生みだしてくれる。教育とは、そういうものなんだと思います。」

確かに、仕分けで捻出した予算で科学と学習に補助金を出せばいいのに。

47年間に及ぶ「科学」のふろくの歴史をカラー写真で振り返る特集記事が目玉。実験カメラ、カブトエビ飼育セット、望遠鏡、電流実験キットなど何百もの当時のふろくが説明つきで掲載されている。どうやってふろくをつくっていたか、当時の編集部の苦労談もある。背景の大人の事情が分かって、大人として面白い。

豆本で再現されたムックには漫画も収録されている。

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この山口太一の連載漫画「名探偵 荒馬宗介」は当時の原稿所在不明で復刻が難しいらしい。歴代では水木しげるや石ノ森章太郎など大御所も描いていたらしい。

『科学』と『学習』のメモリアルなのに8割は『科学』の話だ。当時からふろくが華やかな科学に比べて、『学習』はお勉強的な地味さがあったが、やっぱり一般的に人気は『科学』が圧倒なんですねえ。『学習』の方が古いのに。

・ようこそ地球さん
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ゴールデンウィーク。横浜にできた新スポットTOCみなとみらいに行ってきた。

ショッピングモールやシネマコンプレックス、ホテル・ニューオータニイン横浜を含む大型商業施設だ。「TOC(テーオーシー)」という名前は「東京卸売りセンター」の略に由来し、TOCビル、TOC大崎ビル、浅草ROX、TOC有明、TOCみなとみらいなどの商業施設、 オフィスビルの運営をしている会社だ。

Wikipediaでテーオーシーを調べると

「1926年(大正15年)4月に、SF作家として有名な星新一の父・星一が、星製薬株式会社として創業。星新一も社長を務めたことがある。現在は、ニューオータニと同じ大谷家が経営を行っている。」

なんてことが書いてある。こんなところで星新一の名前が出てくるとはびっくりした。

星新一はたくさん読んだ。

数ある名作ショートショートであなたのベストは何かと問われたら、本書収録の

『処刑』

と答える。思春期に読んで以来、この話が強烈に記憶に焼きついている。

囚人が流刑の星に流されて、ボタン付きの銀の玉を渡されるという話だ。なにもない荒野の星。水に溶かせば食べられる食料はもたされているが肝心の水がない。銀の玉のボタンを押すたびに空気から抽出した水が玉から出てくる。だがある確率で銀の玉は大爆発して囚人を殺してしまうと告げられている。荒野にはそこらに爆発の跡が見られる。

囚人は最初のうちは決死の覚悟でボタンを押した。出てきたコップ一杯の水で渇いたのどを潤した。少ししてまた押してみた。意外にも大丈夫だ。何度目で爆発するかは誰にもわからない。やがて囚人の感覚は麻痺して、ボタンをどんどん押して風呂にまで入る。

何かをするたびに未知の確率で死ぬかもしれない。

これって地球の普通の生活と同じじゃないかと囚人は悟ったのだ。

中学生だった私は、この話に感動した。そういう考え方があったか。人生は未知の確率の連続だし、人類の死亡率は何をしたって最終的には100%だ。ボタンをどんどん押すべきだなあ、と。大人になって起業したのは、この話の影響も1%くらいはあるような気がしている。

・ファイナルファンタジーXIII オリジナル・サウンドトラック(初回生産限定盤) [Limited Edition]
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発売直後に買ったのだがレビューのタイミングを失っていたのでゲームをやる人が多いGWに紹介。私は本編クリア後にロングイ(アダマンタイマイの強化形)も倒せるようになって満足して引退。

ファイナルファンタジー13のサウンドトラック。豪華な初回限定版。ドラクエは親しみやすいメロディが多いのに対して、FFは荘厳な楽曲が多い。聴きごたえがあるという点ではFFの断然サントラ。

この限定版パッケージにはパッケージとオマケがいっぱいついている。

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4枚のCDに全85曲を収録。テーマ曲の「君がいるから (Long Version) 」も入っている。

さすがに何十時間も耳に親しんだ音楽は、身体が反射的に反応するようになっている。通常戦、ボス戦のときの音楽がかかると自然と仕事もやる気になる、ような気がするのでiPodに入れて携帯している。

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初回限定版にはゲーム内キャラクター声優陣らによる新規録り下ろしの"ドラマCD"「FINAL FANTASY XIII Episode Zero -Promise- Story01 -ENCOUNTER-」がボーナスディスクとしてつく。小説版の台詞の読み上げにBGMをつけたもの。実はこれが目当てで買ったが、よくできている。

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最近、意図的にゲーム周りの音楽や小説、映画を研究しているが、ゲームをクリアした人たちだけが楽しめるコンテンツというのは、市場としてもっと広がっていく世界だなあと思う。

・小説 ファイナルファンタジーXIII エピソード0 -約束-
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/-xiii-0.html

・新春ポッドキャスト 「ツイてる!ポッドキャスト新春2010」3日目 と ファイナルファンタジーXIII
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/01/2010xiii.html

・交響組曲「ドラゴンクエストIX」星空の守り人
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/04/ix-1.html

・ドラゴンクエストIX 星空の守り人 オリジナルサウンドトラック [Limited Edition]
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/ix-limited-edition.html

奇跡の脳

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・奇跡の脳
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著者は脳が専門の神経解剖学者。37歳の時、脳卒中に襲われて、まともにはなすこと、歩くことさえできなくなるが、大手術と8年のリハビリで奇跡の復活を遂げた。自分の脳が損傷を受け、そして回復していく体験を生々しくドキュメント化した本書は米国でベストセラーとなった。

脳卒中に襲われた朝、著者は朦朧としていく意識の中で、客観的に自分の身に何が起きているのかを把握していた。一人暮らしの彼女は異変に気づいて助けを呼ばなくてはならないことを理解するが、論理的思考の左脳が破壊されていて、具体的にどうしたらいいのかわからなくなる。

「できごとを順序立てて並べるため、絶え間なく指示を出してくれていた左脳の司令塔が沈黙してしまったので、外部の現実との結びつきを維持すべく、わたしは知覚を総動員しようと懸命になっていました。過去、現在、未来に分かれるはずの時系列の体験は、順序よく並ばずに、全部が孤立したままになってしまっています。言葉による手がかりも得られないので、日常の様々なことまで分からなくなってしまったかのよう。瞬間、瞬間のあいだの知覚的な結びつきを保つことですら、おぼつかない。幾度も幾度も、脳に残されたメッセージをくりかえしました。 (なにをしようとしてるの?助けを呼ぶの?ちゃんとじゅんじょだてて、たすけをもとめようとしてるのよ。なにをしてるんだっけ?てじゅんをふんで、たすけてもらわなきゃ。そうよ、助けをよななくちゃ)」

失われたのは言語能力だけでなく、3次元を認知する能力や、さまざまな感情を感じる能力など、生活に必要な多くのことが、卒中によってできなくなっていた。感情が失われたので喪失や絶望を感じることもなかった。代わりにあったのは、左脳が失われたかわりに支配的になった右脳による宇宙との一体感、不思議な至福の感覚だったという。

彼女は元同僚の医師や母親の力を借りながら、大手術と長いリハビリに耐えて、専門家として現場復帰できるまでの知的能力を取り戻す。この本は、専門家が自身の脳卒中体験を明瞭に言語化できたほぼ唯一の例であるらしい。

驚くべきは回復の過程で自身の人格を作り直すことができたということ。リハビリでは破壊された脳の回路を作り直すわけだが、その際、負の感情やマイナス思考を引き起こす回路の復活を拒むことで、倒れる前よりもポジティブで建設的な自分を作り上げることに成功したと振り返っている。卒中で体験した至福の宇宙との一体感を完全には失わぬように、右脳の働きに重きをおいた作り直しをしたのだ。

原題はMy Stroke of Insight(私の脳卒中によるひらめき)。

「脳卒中によってひらめいたこと。それは右脳の意識の中核には、心の奥深くにある、静かで豊かな感覚と直接結びつく性質が存在しているんだ、という思い。右脳は世界に対して、平和、愛、歓び、そして道場をけなげに表現し続けているのです。」

脳が破壊されるとどうなるかを知ることができる貴重な体験談である。

千羽鶴

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・千羽鶴
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日本的な情緒溢れる背徳小説。川端康成。

(筋がネタバレしますが)

主人公は今は亡き父親の愛人と深い仲になるが、その女が苦悩して自殺してしまう。そのなりゆきで今度はその娘と交際するが、うまくいかない。父親にはもうひとり愛人がいて、そのすすめで引き合わされた清純な女性と出会い結婚するが、主人公にはやはり心にひきずるものがあって真の夫婦になりきれない。

|「奥さんには父と僕との区別がついているんですか。」
|「残酷ねえ、いやよ。」
| 目を閉じたままあまい声で、夫人は言った。
| 夫人は別の世界から直ぐには帰ろうとしないようだった。
| 菊治は夫人に言うよりも、むしろ自分の心の底の不安に向かって言ったのだった。

乱れた男女の話だが、濡れ場の直接表現は一か所もなくて、川端は、遠まわしに婉曲に、そのエロスを見事に表現する。行間の淫靡さがこの作品の魅力。

鎌倉が舞台で茶道の家の話なので、茶器の名器がでてくる。「白い釉のなかにほのかな赤が浮き出て、冷たくて温かいように艶な肌に」などというように、名器は主人公が関係した女性の身体を思わせる。茶器の飲み口に残った淡い赤みを、死んだ女の口紅がしみこんだあととみなして「吐きそうな不潔と、よろめくような誘惑とを、同時に感じた」りする主人公。

川端康成は本質的にはフェティシズム官能小説家なのだよなあと再認識する作品。

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舞台となる鎌倉の桜

・みずうみ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1056.html

・名人
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-988.html

・愛する人達
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-961.html

・眠れる美女
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-847.html

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