振仮名の歴史
平安時代から現代まで振仮名の歴史を振り返るトリビアな新書。
日本語特有の表記法である振り仮名には大きく「読みとしての振仮名」と「表現としての振仮名」の二つがある。「合図」と書いて"あいず"と振るのが前者であるなら、"サイン"と振るのが後者である。
古くは、漢語で書かれた日本書紀にも振仮名が振られていることがわかる。中国語を日本語で読むことが契機となって誕生したものであるらしい。二つの使い方は当初から存在していた。室町時代の頃には左右両振仮名というのもあって、読みと表現の両方を左右に書いた例もある。
表現としての利用が極まった例として、実際にはない漢字をでっちあげて、それに振仮名を振って遊んだ平安時代の嘘字なども紹介されている。実用性だけではなくて、それ自体がかなり饒舌なサポーターとして日本語文化を支えてきた。
明治時代に官権派の「大新聞」は振仮名を振らず、大衆的な読者を対象にした「小新聞」は振っていたという話がある。振仮名があったおかげで、日本の民主化が進んだとさえいえるのかもしれない。
本分を補助する形で微妙なニュアンスを表現でき、漢文や英語のような外国語にも振ることができる。振仮名は考えてみればかなり便利なしろものだ。自由度が高いから使い方は定まらず、しぶとく残ってきた。Webでも振仮名は使えるわけだから、これから新しい形の表現が生まれてくることもあるだろうか。
振仮名についての歴史とマメ知識がいっぱいの本である。学校ではまず習わなかったことばかり。ルビという言葉はダイヤモンド、パール、ルビーのRubyから来ていたというのは初めて知ったなあ。
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