機長の「集中術」
わかりやすい極意の書だ。
「集中力がスキルである以上、テクニカルスキルと同様に、目的意識の強さ、教育、訓練、努力、工夫、習慣などによって、いくらでも何歳になっても伸ばすことができるのです。」
著者は日本航空で常務歴42年の元機長。総飛行時間1万8500時間(地球800周相当)。引退まで一度も病気で休んだり自己都合でスケジュールを変更したことがなく、この4月、63歳まで現役で機長を務めた。日本航空の国際路線すべてを飛んだ伝説的パイロットが語る集中力発揮の方法論。
集中力とは捨てる技術だという。自分が好きなこと、やりたいこと、やるべきことに集中し、それ以外をいかに捨てるかが重要だという。具体的に著者は長年のパイロット生活においてどう心がけてきたかを教えている。
「パイロットが一般の職業に比べて、集中力の発揮の仕方がうまい、スゴイと言われるのは、数百名の尊い生命をあずかっている、という使命感があることはもちろんですが、常に時間というものを意識して仕事をしていることも、大きな要因のひとつです。 そしてフライトに関わるすべての業務を、出発の時間、あるいは到着の時間から逆算して、それぞれの仕事、手順、操作、打ち合わせなどに時間の制限をつけて実施しているのです。 このように、一般の仕事でも常に時間を意識して実施すれば、必然的に、集中力を発揮せざるを得なくなります。」
とても思い当たることがひとつある。私は普通の人よりも多くの本を読むから、しばしば「どうやったら本を速く読めますか?」という質問をいただく。答えは簡単で、30分おきに何ページ読めたかをチェックすれば自然と速くなる。速読メソッドなんて不要で、人は文字を速く読もうと意識すれば、少なくとも意識しているうちは速く読めるものだ。そのうち忘れて遅くなるので、一定間隔で読み進めたページ数を確認すれば、それだけで何割かは速くなる。私の場合は電車内での読書が中心なので、時間内に何ページ読めるかが特に重要なのだ。
また「間」の使い方にもパイロットならではの秘訣がある。
「ノーマル・オペレーション(通常操作)では、「間」をとりながら、ひとつひとつ確実に操作をしていくことに、注意力・集中力を使っています。トラブルや緊急事態が発生した場合は、逆に迅速に対応しないと、手遅れになってしまいます。このように、「平時においては、ちょっと『間』をとり、緊急時には迅速な対応」が「間」のとり方のポイントです。」
著者はアスリートのような一瞬の集中力と同時に、長時間にわたる持続的な集中力も常に意識している。小さなことを見逃さない注意と、本質と重要度を見極める注意を同時に持つことも重要視している。虫の眼、鳥の眼、魚の眼、心眼の4つの眼をバランスよく使うことが大事だと説く。
著者の話す秘訣は、当たり前に聞こえるものが多い。だが42年間、人命を預かって飛行機を運航してきた機長の実績は重い。長期間にわたって高い集中力を発揮してきた達人の振り返りの言葉はまさに金言であると思う。日常の中で自己の集中力を客観的にコントロールすることが、仕事や人生を大きく変えうるということに気がつかされる。
・集中力
http://www.ringolab.com/note/daiya/2004/03/post-64.html
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