火打ち箱 (こんなアンデルセン知ってた?)
大人も子供も楽しめるアートな絵本。
アンデルセンの隠れた名作『火打ち箱』を絵本にした。絵本といっても本当は絵ではない。ペーパークラフトで物語を再現してデジカメで撮影した写真集である。紙にペン画を描いた後、切り抜いたり折ったりして一部を立体化する。
2次元と3次元の中間の不思議な次元感覚が、荒唐無稽なストーリーとあいまって、独特の世界観を醸し出している。「目玉が茶碗くらいある犬、水車くらいある犬、塔ぐらいある犬」なんて普通の表現では難しいはずだが、超次元的な表現技法によって、いかにもそれっぽくビジュアライズされている。
もともと原作がかなり変な話だ。家に帰る途中の兵隊が、魔法使いのおばあさんと出会って、願いがかなう魔法の火打石を手に入れ、無軌道にやりたい放題やって、当然まずくなるだろと思ったら、案外なんとかなってしまう、という話。
童話にもかかわらず「正直に生きなきゃね」とか「人には優しく」とか「命は大切に」とか教訓が存在しない。カオスでアナーキーな展開に子供は笑い、大人はちょっと呆然とする。有名な童話作家のアンデルセンって実はかなり曲者だったことに気づかされる。
強烈な印象を残す作品だ。一度読んだら忘れがたい一冊になるだろう。この半立体紙芝居は動く映像化されたら楽しいかも。
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