グーグル時代の情報整理術
グーグルの中の人が情報に対してどんなことを考えているのか知ることができる。
著者のダグラス・C・メリルは子供の頃からの失読症を克服してプリンストン大で認知科学の博士号を取得した後、グーグルのCIO(情報最高責任者)に就任した人物。情報処理に人一倍の認知コストを必要とする病だったからこそ、脳に負担をかけない効率化を徹底するようになったという。本書の情報整理術は人間に余分な整理の努力を求めない。
「本書でご紹介するのは"万人共通"の整理術ではない。受信トレイを常にからにせよとか、コンピューターのファイルをフォルダー階層別に分類せよとか、明細書をデジタルで受け取るようにせよとか、そんな方法を押し付けるつもりはない。そんな方法に従って生活しなくちゃならないとしたら、私自身が「整理できない人間」のレッテルを貼られてしまうに違いない。」
なんでもデジタル化して検索できるようにすれば、デジタル情報の保存、整理、検索を行うためのデジタルツールで問題は軽々と解決する、というのが著者の持論だ。だから大切なのは検索することを前提に足場(デジタル情報整理の環境)を組むことが一番で、やはり決め手はグーグルやGメールだということになる。
「整理術の原則」20カ条がまとめられているが、たとえば私が共感した項目を抜粋すると、
1 脳の負担がなるべく少なくなるように、生活を組み立てよう
2 なるべく早く、頭の中から情報を追い出そう
3 "ながら作業"は一般的に効率を低下させる
6 知識は力ならず、知識の共有こそ力なり
20仕事とプライベートのバランスを取るのではなく、融合させよう
といった感じ。とにかく無理をせず、ルールさえ意識していれば自然にうまくいく、ノーストレスの情報整理術のヒューリスティック集だ。グーグルに限らず、便利なデジタルツールも大量に紹介されている。情報整理について今一度、考えてみたい人は必読。
効率性を説いているわけではあるが、かなり著者の人生観や私生活に触れるウェットな記述も多くて、人柄がでている人間を感じさせる本である。こうやって顔が見えるとグーグルという会社が一層面白く思えてきた。
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