ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所
・毎朝登校する生徒は33人中5人
・1から100まで数えられない生徒がいる
・九九が完全にできるのは160人中20人
・入学者の半数が中退する
・高校を中退する生徒の半数は1年生
・やめさせようとする教師たちの存在
などいわゆる底辺校の実態と増加する高校中退者のドキュメンタリ。
現代の高校中退は個人の問題ではなく社会の深刻な病理のようだ。
高校中退の背景には家庭の貧困があり、不安定な生活や余裕がない家庭環境が、生徒の低学力、不登校を引き起こし、中退へとつながっている。学習意欲と貧困の間にも密接な関連が見出されている。エリート校と底辺校の格差は増大傾向にある。
高卒以上が圧倒的マジョリティを占める日本社会において高校を出ていないことは極めて不利にはたらく。実際、不況の中で高校中退者の就職は困難を極めている。調べてみると生徒の父母もまた中退者であったりして、格差の拡大という負の再生産が発生してしまっている例もある。
「1980年代からの世界を巻き込んだ新自由主義の実験は、世界中に無惨な結果を残した。新自由主義が主として攻撃の対象とした福祉国家とは、資本主義の成立の要である労働力の再生産にとって欠かせないもののはずだった。ところが新自由主義は、労働力の再生産に必要な住宅・教育・医療・福祉を市場化し、福祉国家を解体することによって、もっとも福祉を必要とする貧困層に打撃を与え、さらに中間層をも分解するという結果をもたらしたのである。」
「社会の底辺」という言葉が存在しない社会をつくるには、夢や希望を失った一番若い人たちを救済することが特に重要だろうなあと思う。著者が解決策として結論する高校教育の無償化が効果的なのかは確信が持てないが、高校中退=社会からのドロップアウトという図式をなくすことが何より大切だろう。競争社会とセーフティネットは共存しないと人間的ではないと思う。
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