アンダーカレント
文学的で、静かに感動を呼ぶ、上質な漫画。よいです。
静かな日常の下に隠れた暗くて激しい底流というものがテーマ。
銭湯を経営する関口かなえは、何の兆しもなく失踪した夫のことを、できるだけ考えないようにしながら、日々の仕事に追われていた。人手不足の銭湯に組合の紹介でやってきた寡黙な男 掘さんが、店に住み込みで働き始める。おかげで一息つけるようになったかなえは、抑えていた自分の感情と正面から向き合うようになる。
なぜ夫は出て行ったのか?。他に好きな人がいたのか、何かやりたいことがあったのか、自分を嫌いになったのか、銭湯の仕事が嫌いだったのか。考えてもよくわからない。彼のことをまったくわかっていなかったのではないかと思うのがつらい。そんな葛藤のかなえのもとに探偵を使って調べてみないかという誘いがやってくる。そして失踪の真相が少しずつ明らかになっていくのだが。
淡々とした日常が物語の3分の2を占めるので、一話一話を取り上げると地味な印象を受けるが、通しで全部を読むとしっかりと残るものがあって、よくできた映画や小説のような厚みがある。個性的な脇役も活きている。コマ割は映画のようだ。これは映画化される、に一票。
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