ブランド 価値の創造
価値があるから消費者に選ばれてブランドになるいう「ブランド自然選択説」。ブランド自体の世界観やビジョンが価値を創造するという「ブランドパワー説」。ブランドに対しては対照的なとらえかたがあるが、消費欲望や権威に還元するだけでは説明できない「何か」こそブランドのブランドの本質であると説くブランドの本質論と、有名ブランドをケースにしたブランドマネジメント論。
「ブランドと製品群とはまさに相互に支えあって、ひとつの世界をつくりだしている。それはいわば、どちらかがどちらかを支えているという一方的な関係に還元して理解できず、お互いがお互いを前提とすることで根拠づけられるという自己言及的な関係だといえる。それは、ひとつの社会的実在としての意味世界を形成するきっかけでもある。」
アップルが価値があるのはアップルだから、ソニーがいいのはソニーだからでもある。ブランド価値の定義は無限循環の自己言及プロセスになる。メディアはメッセージであるというマクルーハンの思想が、ブランドという概念にもあてはまる。ブランドパワーは制作者や経営者がこめる思いや夢が想像する意味世界が、実体の世界を動かす力になる。
この本ではブランド・パワーの構成要素として以下のようなものが挙げられている。
「そのブランドは、どれだけ消費者に知られているか」(ブランド知名度)
「その内容を、消費者はどれだけ理解しているか」(ブランド理解度)
「それは、どれだけの試行購入を喚起するか」(トライアル喚起力)
「それは、どれほどの再購入意図を生みだしているか」(リピート喚起力)
「消費者は、それに、どれほどの新しさや驚きを感じているか」(情緒尺度)
「それは、価格面で、他のブランドにひけをとらないか」(相対価格)
こうした要素ではかられたブランドパワーアメリカの上位ブランドは、半世紀以上続いたものがほとんどだ。そこでは一度作られたブランドに対して常に絶えざるブランド価値の再構成が行われてきた。認知されたブランドを企業はどう拡張していくべきか、成功例と失敗例、経営におけるブランドのマネジメント論が語られている。
1999年初版の本なので目新しい事例はないが、ブランドってなんだろうと改めて本質を振り返ってみたいときに役立つ教科書的な内容。
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