スキエンティア
感動した。連作短編集だが全作が傑作ではずさない。
スキエンティアはラテン語で「知識」という意味。クローン、ロボット、惚れ薬など、未来の禁断の科学技術が、人々の生活にどんな影響を与えていくかを描いたサイエンスフィクション。基本はSFなんだけれども、とてもヒューマンドラマしている。
「ボディレンタル」
「媚薬」
「クローン」
「抗鬱機」
「ロボット」
「ドラッグ」
「覚醒機」
クローンにしても人工知能介護ロボットにしても、ここで取り上げられる技術は、人間心理の微妙な領域に入り込んでくるものばかり。生と死、性、家族、恋愛などを変革するイノベーションが登場したとき、私たちはそれをどう受け入れて行くか、あるいは拒絶するかのシミュレーション。
一話目。四肢が動かなくなった大富豪の老女が、人生をもういちどやり直すために、若い女の身体を借りる「ボディレンタル」。映画『アバター』みたいな設定だが、こちらの設定では、二人の意識はひとつの身体に同居する。起業家としてパワフルに生きてきた老女と、何事にも流され気味だった女の、二人の心がせめぎあう。
どの話も人間の命や尊厳と関わっていて、重たく切ない内容なのだが、すべて希望をもたせる終わり方をするのがいい。ほろっ、じわっ系。どらえもんの未来技術とブラックジャックのヒューマニズムを足して2で割って、絵はちょっと諸星大二郎的劇画調。
連続ドラマ化されたらいいなあ。
・著者 戸田誠二氏のサイト
http://nematoda.hp.infoseek.co.jp/
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