セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方

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・セクシィ・ギャルの大研究―女の読み方・読まれ方・読ませ方
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上野千鶴子の"処女喪失作"が四半世紀ぶりに文庫化。カッパブックスから岩波現代文庫へ。

「男は「女らしさ」を振つけし、読みとり、鑑賞し───そしてもちろん、発情する。この「らしさ」のカタログは、男たちの作ったマスメディアの中に、うんざりするほど登場する。いまからお目にかけるのは、広告というもっともポピュラーな媒体に登場する、女たちの「らしさ」のカタログであり、その隠されたメッセージを読みとく手引きである。」

四半世紀経っても男の目から見てのセクシー=「女らしさ」はあまり変わっていないように思える。四つん這いだとか、体をくねらせるとか、流し目、濡れた唇に、男はついついそそられてしまう。広告はそうした男性の心理を利用して、巧妙に商業的メッセージを発信してきた。

「女らしさ」は男性が文法をつくりだす。こんな面白い研究が紹介されている。

「女性がオールヌードでいるところに、突然、男性が現れたとき、彼女は二本の手でまっ先にどこを隠すか?」をある比較行動学者が調べところ、3つの選択肢が見つかった。

1 両手で胸を隠す
2 両手で性器を隠す
3 片手で胸を、片手で性器を隠す

調査結果では先進国の女性はほとんど例外なく両手で胸を隠した。未開社会でトップレスで暮らす女性が下半身は必ず腰巻で覆っているのと対照的な結果になった。これは先進国の文化では乳房がセックスシンボルに変わったからだという。

もともとルイ王朝時代のフランスでは貴族女性のドレスはトップレスで、女性は乳房を堂々と誇示するものであったそうだ。形のよい乳房をつくるためのブラジャーが登場してから、それは隠すものになり、シンボルとしての価値を高めていった経緯があるなんていう歴史も紹介されている。

男性によって規定されたセックスシンボルだが、とっさに女性が胸を隠すようになったというのは興味深い。論理的に考えているわけじゃなくて、自然にそうした行動に出る。俗に性的本能と思われているものは実はかなり深くまで社会的、文化的な創造物なのだ。そして乳房を隠そうとして、体をくねらせる防衛姿勢もまたセクシーのメッセージとして文法に織り込まれていく。

今読んでも面白い、「らしさ」という社会的衣服の読み方、読まれ方、読ませ方を語る本。つまるところ、いい女って何かという問題には、「口説けば落ちる」と男に思わせること、もっというなら「やらせる女」(ビートたけし)のイメージだと答えられている。美術の歴史を古代まで遡ってみても、それってかなり普遍的な真理のようだ。日本神話のイザナギ、イザナミだって誘う男、誘う女という意味があるわけだから「セクシィ・ギャル」は浮ついた話題なんかじゃなくて、人類の大問題なのであるよ。

・裸体とはじらいの文化史―文明化の過程の神話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1064.html

・セックスと科学のイケない関係
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-987.html

・性欲の文化史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/07/post-1020.html

・日本の女が好きである。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1010.html

・ナンパを科学する ヒトのふたつの性戦略
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・ウーマンウォッチング
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-958.html

・愛の空間
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・性の用語集
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・みんな、気持ちよかった!―人類10万年のセックス史
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・ヒトはなぜするのか WHY WE DO IT : Rethinking Sex and the Selfish Gene
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・夜這いの民俗学・性愛編
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・性と暴力のアメリカ―理念先行国家の矛盾と苦悶
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・武士道とエロス
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・男女交際進化論「情交」か「肉交」か
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このページは、daiyaが2010年2月 2日 23:59に書いたブログ記事です。

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