日本辺境論
非常に面白い。わかりやすい。いい本だ。
日本人の島国根性の本質を「辺境人」としてずばり言い当てる。
「ここではないどこか、外部のどこかに、世界の中心たる「絶対的価値体」がある。それにどうすれば近づけるか、どうすれば遠のくか、もっぱらその距離の意識に基づいて思考と行動が決定されている。そのような人間のことを私は本書ではこれ以後「辺境人」と呼ぼうと思います。」
かつては中国であり、欧米列強であり、今はアメリカあたりが中心になっている。
「私たちに世界標準の制定力がないのは、私たちが発信するメッセージに意味や有用性が不足しているからではありません。「保証人」を外部の上位者につい求めてしまうからです。外部に、「正しさ」を包括的に保証する誰かがいるというのは「弟子」の発想であり、「辺境人」の発想です。」
この本が面白いのは、辺境人だからダメだ、というのではなくて、辺境人の強さもあるという、ポジティブな開き直りのベクトルで書かれているところだ。たとえば「外部に上位文化がある」というロマンは無限の「学び」につながる。どこまでいってもまだまだ上があると思い込んで道を究めていくことができる長所がある、という。
劣等感は個人において成長の糧になるものだが、民族レベルでも文化的劣等感というのはが役割を果たすことがあるのだと思う。著者は敢えて開き直って、それを日本の強みであると論じている。それでいいのだという肯定の本である。
明解な論旨で総論納得なのだが、よく考えてみると、完全に開き直ってしまえば成長もないわけである。この本はベストセラーになったが、グローバル志向の人たちからは、批判も多くあるようだ。結局、一筋縄ではいかなくて「だから日本はダメなんだ」と言い続けるのも日本の強さなのじゃないかなあ。
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