2009年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門

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2009年にこのブログで紹介した小説・創作作品の中から、これは本当によかったと思う本をランキングで1ダース並べてみました。私が2009年中に読んだというのが基準なので、昔に発表された作品もかなり含まれています。

小説に順位をつけるのは難しいのですが、1位は万人におすすめできるということで選びました。URLをクリックすると書評エントリへ、表紙画像をクリックするとアマゾンへ飛びます。

・2008年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/2008-3.html
・2007年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/01/2007-5.html
・2006年度 年間オススメ書籍ランキング フィクション部門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004849.html

■1位 学問
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1130.html

・学問

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テーマは性と生だが、本質はまっすぐな青春小説だ。思春期の性の衝動。「まったくセックスというやつは、どれほど多くの枝葉を携えているものなのでしょう。幸せに喜ばせ合う夜もあれば、怒りを噴出させる昼もある。神聖な儀式にも、しこしこの鍛錬にも配属される。まったく、油断も隙もありゃしない」欲望にときには翻弄されながらも、しっかり自分を持って人を愛することを覚えていく少年少女の成長がまぶしい。欲望の奴隷ではなく、欲望の愛弟子になる。だからそれは学問。

■2位 太陽を曳く馬
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/10/post-1080.html

・太陽を曳く馬〈上〉

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主人公の刑事 合田雄一郎は、光のビジョンに狂った青年画家の奇妙な殺人事件と、てんかん発作で寺を飛び出し車にひかれた僧侶の死亡事件の不合理を追究していくうちに、裁判過程では決して取り上げられない真理を見出す。事件の調査の枠を超えて僧侶達との禅問答に深入りしていく。現代における宗教とは何か、芸術とは何か、意味と価値を問い直す心身問題、9.11事件、オウム事件以後の日本と世界の変容。

■3位 聖家族
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-905.html

・聖家族

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異なる時代を生きた数十人の登場人物のそれぞれの生き様が、異世界の超越ネットワークを通じて呼応して、大きなうねりを未来につくりだしていくという、作者の壮大な歴史のビジョンに圧倒される。私はこれを読みながら本当に熱を出してしまった。心身準備を整えてから挑戦しないと受け止めきれないくらい、作者の心的エネルギーが注ぎ込まれた魔性の作品である。

■4位 冷たい肌
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-994.html

・冷たい肌

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解放運動の夢破れた主人公は絶海の孤島での気象観測の仕事に志願する。前任者と交代するべく島に上陸すると、灯台には何かに取り憑かれたような正体不明の男がいた。対話をひたすらに拒む男に主人公は当惑する。そして日が沈んだとき島は、人間ではない異形の何かの襲撃を受ける。死の危険を前にして、二人の生き残りをかけた戦いが始まる。

■5位 花宵道中
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-936.html

・花宵道中

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新潮社のR-18文学賞というのは単なる官能系文学賞ではなくて「女による女のための R-18文学賞」である。応募者は女性作家に限定されているだけでなく、下読みレベルから審査員まで選考にかかわるスタッフすべて女性である。男の好みを入れずに、女が感じる官能小説の凄いのが大賞に選ばれる。大賞と別に読者賞があり、その投票も女性限定である。それで本作品は大賞と読者賞ダブル受賞している。女のエロティシズムの極みである。

■6位 デンデラ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/10/post-1095.html

・デンデラ

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姥捨て山に捨てられた老婆たちが50人、村の反対側の"デンデラ"で何十年も密かに生き延びて、自分たちを捨てた村への復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。新参者の斉藤カユ(70)は、"お山参り"で死に切れなかった自分を情けなく思うのだが、三ツ屋メイ(100)を頂点とする超高齢者コミュニティは、山奥の厳しい生存環境と戦いながら、仲間を増やし、懸命に生き続けることを考えていた。

■7位 ヘヴン
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1132.html

・ヘヴン

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いじめにかかわる双方の張りつめた対話が続く。登場人物はいじめる側も、いじめられる側も雄弁に自分の立場を語る。現実にはこれだけ気持ちを整理して話せる少年少女はいないだろうが、その超現実的につきつめたやりとりが、いじめ問題の本質を白日のもと晒す。朝まで生テレビで一晩議論するより、この作品を読んだ方が、いじめとは何かがよくわかるはず。その根の深さにやりきれなくもなるのだが。

■8位 ブロデックの報告書
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/04/post-963.html

・ブロデックの報告書

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ブロデックの立場は国の正史を書く歴史家の立場と同じでもある。正史の書き手は現状の権力関係の正統性を肯定するように、過去を物語化することが求められる。ブロデックは屈辱的な服従の経験を振り返りながら、村の歴史をどう書くべきかを苦悩する。虚偽を書いて村の一員になるか、真実を書いて制裁を受けるか。ミステリー仕立ての作風だが、テーマは重たい。圧倒的な疎外の物語である。

■9位 粘膜人間
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-948.html

・粘膜人間

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河童が主要登場キャラとしてでてくるが、この妖怪の描き方が昔話や伝説に出てくる河童とかなりずれている。ぐにゃりとした体つきで低知能で兇暴な性格。怒りだしたら何をするかわからない。想定外の要素に満ちた河童。正体がわかっている恐怖よりも、得体の知れないもの、異形のもののほうが底なしに恐ろしい。明らかに人間ではないのに話が通じる(しかし感情や常識は共有していない)ところがこの河童の不気味な怖さの理由なのかもしれない。

■10位 新世界より
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/05/post-983.html

・新世界より 上

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・新世界より 下

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一人の人間がコミュニティを壊滅させる力を潜在的に持っている社会。これって現代社会の縮図なのだと思う。9.11テロを例に出すまでもなく現代人はその気になれば一人で大勢を殺すことができる。飛行機を乗っ取ってビルに激突させる、炭疽菌を送りつける、銃を乱射する。知識や設備があれば爆弾や強力な毒ガスで何万人、何十万人を殺傷することも考えらる。異者との共存、異文化理解、科学と宗教など現代的で重いテーマを幾つも抱えつつも、ミステリあり冒険とパニックあり、恋愛ありと娯楽性もたっぷりに最後までぐいぐい引きつける大作。

■ 11位 やんごとなき読者
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/06/post-1006.html

・やんごとなき読者

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「「陛下はどんな本がお好きですか?」女王は躊躇した。実を言うと、何が好きなのか自分でもよくわからなかったからだ。昔から読書にはあまり興味がなかった。もちろん人並みに読んではきたが、本を好むなどということは他の人にまかせてきた。それは趣味の範疇であり、趣味をもつのは彼女の性質にふさわしくなかった。」

■12位 1Q84
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/12/post-1140.html

・1Q84 BOOK 1

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・1Q84 BOOK 2
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100万部売れることやメディアで取り上げられること。こうした状況を含めて、この1Q84という作品は村上春樹によってプロデュースされているように感じた。作中で主人公のひとり天吾書いた小説「空気さなぎ」がメディアで話題になる場面があるが、天吾は村上春樹のアバターであり、「空気さなぎ」は「1Q84」のメタファーである。作中ですべての謎が明らかにされないことへの不満に、現実世界ではBook3の出版を発表した。1Q84はまだプロデュースが継続中のメタ・メディア小説なのである。書評は3の後に書くべきかもしれない。

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このページは、daiyaが2010年1月24日 23:59に書いたブログ記事です。

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