クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス
Webマーケッターは一読の価値あり。
著者のビル・ダンサーが所属するHitwise社はISPのアクセスログなど1000万人のWebアクセスデータを収集して、インターネットユーザーのクリック動向を解析している。このデータを使うと、どんなプロフィールのユーザーが、どのようなサイトに、どれくらいの頻度でアクセスしているかが把握できる。またどのページからどのページへと移動しているのかも丸見えになる。
・HItwise
http://www.hitwise.com/us
海外中心のデータだが、現在のWebのトラフィック動向がよくわかる。たとえばCGMサイトに書き込みをする人と閲覧をする人の比率について、こんなデータが明かされている。
「ウェブ2.0的なサイトへの全アクセス数の1パーセント未満が、ユーチューブに自ら作成した動画を投稿するなど積極的に参加している人たち、9パーセント(この数字はそのサイトのオペレーションの「複雑さ」)によって、3パーセントから9パーセントの幅で変動する)が、項目を編集するかコメントを書き込みながら、消費者の生み出したコンテンツと相互に関わり合っている人たち、そして90パーセントが潜伏者であり、反応はせずに黙ってコンテンツをながめているだけ」
90%のマジョリティの気持ちはわかっても、1%や9%のの常連投稿者たちとコメント投稿者の気持ちが分かる人は少ないと思う。多くの企業によるCGMサイトが投稿者の不足で苦しむのは、広告経由で来訪するようなマジョリティ向けに作りこんでしまう結果なのではないか。個人やベンチャー発のCGMサイト(ミクシイもグリーも)は開発者がコア層の人間だったから成功したように思える。
もちろんマジョリティもいつまでもネット初心者ではなく、検索エンジンにおいて3語以上での検索が2003年では全検索数の14%にだったが2007年には23%にまで増加したという底上げ現象も起きているそうではあるが。
層と層のインタラクションという分析も興味深い。たとえばウィキペディアにアクセスする人は18歳から24歳の層が大きな割合を占めているが、書き込みをする人は45歳以上が41%を占めていて18歳から24歳は17%に過ぎない。年長者が若年層に教えているという図式になっているという。
そして大変面白かったのが、知られざるアダルトサイトの現状である。アダルトサイトへのアクセス数は72.6%が男性だが、テキスト主体の「エロ文学」サイトでは女性が65.5%を占める。( たとえば http://www.adultfanfiction.net/ だそうだが、英語力が相当ないと興奮できない(笑)。)
2007年頃から若年層でアダルトサイトの視聴時間が減って、SNSの視聴時間が上がった。異性の裸より友達との会話に時間を費やすようになったという。Twitterブームはその延長線上にあるのだろう。「フェイスブックで生身の人と接触できるチャンスが得られるのに、どうしてポルノが必要なのか」という利用者の声まで紹介されているが、実に健全なリテラシーの向上と言えそう。
本書はこうしたデータとその分析の話がひたすら続く。米国での出版は2008年度であるため、2009年の状況は入っていないのだが、Web2.0、3.0世界のトラフィックサマリーとしてはだまだ有効であろう。
日本のトラフィックに特化した本を誰か書いてくれないかなあ。Internet Survey MLの萩原代表が適任者だと思うのですが。
・Internet Survey Reference Room
http://masashi.typepad.jp/surveyml/
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