学問
本当に素晴らしい。ストレートに心にじーんときてしまう感動小説である。山田詠美の大傑作。とりあえず今年これだけは読んでおけ的な、絶対いちおし作品。
東京から引っ越してきた仁美、包容力のあるリーダー格の心太、食べ物に目がない無量、眠ることが好きな千穂。仲良し少年少女4人組が海辺の平和な町で過ごした小学校から高校までの日々が語られる。
テーマは性と生だが、本質はまっすぐな青春小説だ。
やがて芽生える性の衝動。
「まったくセックスというやつは、どれほど多くの枝葉を携えているものなのでしょう。幸せに喜ばせ合う夜もあれば、怒りを噴出させる昼もある。神聖な儀式にも、しこしこの鍛錬にも配属される。まったく、油断も隙もありゃしない」
欲望にときには翻弄されながらも、しっかり自分を持って人を愛することを覚えていく少年少女の成長がまぶしい。欲望の奴隷ではなく、欲望の愛弟子になる。だからそれは学問。
「元、高校教師の香坂仁美(こうさか・ひとみ)さんが2月14日、心筋梗塞のため死去した。享年68。」
だが、"秘密基地"で過ごした幸せな少年少女時代はいつまでも続かない。各章は登場人物たちのそれぞれの訃報から過去を振り返る形で始まる。青春を謳歌する少年少女の物語に、やがて訪れる人生の終わりの予告が全体に濃い陰影を与えている。
山田詠美ってこういうのが書けるのかと大発見。文章は読みやすいが、行間を読ませて、感動を誘う深みがある。完璧な小説。
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