米原万里の「愛の法則」
作家、エッセイストでロシア語同時通訳者でもあったの米原万里の講演録集。
1本目「愛の法則」は女は男を次の3つに分類するという話。
A ぜひ寝てみたい男
B まあ、寝てもいいかなってタイプ
C 絶対寝たくないタイプ
で、世の中カテゴリCが90%を占めている。歴史的に見ても、女性は多くの男を競わせて優秀な一人を選ぶことになっている、竹取物語やかえるの王子など、女が主人公の物語では普遍的にそういう法則があるでしょう、という。その理由を性淘汰による進化論的視点や社会学的なキーワードで読みとく。
2本目の講演は、ロシア語通訳でもあった著者らしく国際関係論。
グローバリゼーションとは、イギリスやアメリカが、自分たちの基準で、自分たちの標準で世界を覆いつくそうとすること。国際化とは、世界の基準に自分をあわせようとすること。めざすべきはどちらでもないのではないかという話。
「これは日本人の伝統的な習性で、その時々の世界の最強の国が、イコール世界になってしまう傾向がありいます。しかも、世界最強の国というときに、何を基準に世界列強と判断するか。基本的には軍事力と経済力、これだけを見て、文化を見ません。文化を見ないにもかかわらず、なぜか世界最強の軍事力と経済力を持つ国は文化も最高だと錯覚してしまう傾向があります。」
だから今の日本はアメリカを最高だと考えて英語ばかりを勉強する。驚いたことにサミットの同時通訳では日本だけが、英語以外の外国語をいったん英語に翻訳してから日本語に翻訳しているのだという。これでは微妙なニュアンスが削られてしまうし、すべてが英語文化の色眼鏡で見ることになる。英語偏重の危険、直接の関係を築いてこその国際化、国際化を錯覚すると自国の文化を喪失しかねない、と言い、本当の意味での国際化とは何かを啓発する。
日本の国際化というと遣唐使に始まり現代のMBA留学まで、一部のエリート層が海外のこれまたエリート文化を学んで持ち帰り、多くの日本人はその流儀に倣うことが国際化だと考えてきたように思う。関係性が間接的なのである。
他2本のテーマの講演があるが、男女関係、国際関係での経験をネタに、人と人とが直接コミュニケーションすることの大切さ、面白さを語るという点で4編とも共通している。ユーモアたっぷり軽妙な語り口だが、ところどころに鋭い指摘があってどきっとする。
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