社会的排除―参加の欠如・不確かな帰属

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・社会的排除―参加の欠如・不確かな帰属
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Diversityという言葉があるが、英語では多くの場合、この単語はDiversity and InclusionまたはInclusivenessというセットで使われる。多様性を実現しただけでは単なるバラバラなのであって、包摂の力があるからこそ組織や社会に活力がうまれる。包摂の逆がこの本のいう排除である。ホームレスやワーキングプア、ネットカフェ難民など、不安定な就労、家族を持たない、住居の形成が不確か、地域を転々とする、といった生活状況で、社会参加や確かな帰属を得ることができないでいる人々がうまれる原因を探る。

「こうした主要な社会関係から特定の人々を閉め出す構造から、現代の社会問題を説明し、これを阻止して、「社会的包摂」を実現しようとする政策の新しい言葉が、『社会的排除』(social exclusion)である。」

著者はホームレスやネットカフェ難民の実態を調査して、現代の社会的排除の構造を明らかにしていく。社会的排除は現象としては、

空間的排除 ホームレスやネットカフェ難民など
福祉制度からの排除 
 
の二つがある。

そしてこれら社会的排除の原因は大きく二つあった。安定した就労や家族を一度は持ちながら、何らかの不幸な原因で社会的に転落していく「引きはがし」組。そもそも最初からメインストリームへの参加ができなかった「中途半端な接合」組。年代的には50代と20代に二つの山があることがわかった。

引きはがしは、失業や倒産、離婚や借金、アル中や交通事故、災害や怪我などが原因だが、メインストリームにきちんと組みこまれている人は、ひとつの原因では転落しない。多くのホームレスは複合的な要因が絡んで、定点を失っている。若年のネットカフェ・ホームレスでは、就労の不安定、実家との関係の悪さ、学校の中退や義務教育止まりが、社会との接合の中途半端さの原因となっていることがわかった。

現代日本の社会的排除はアパルトヘイトのようなわかりやすいものではない。

「では、空間的に表現される社会的排除とは何であろうか。inとoutの空間関係を極端に表現すれば、outとは空間からの追放を意味する。オーバーステイの外国人の本国送還、あるいはホームレスの本籍地送還、さらにはナチズムのような特定民族の抹殺などが例に挙げられよう。だが、社会的排除論のいうoutは必ずしも極端な抹殺や消去だけを意味しない。多くは、主要な社会関係から排除されながら、生身の体はその社会空間から消えてなくなることはできないような矛盾の中にある関係である。この矛盾を解決するのが、同じ社会空間の中に、排除された人々を引受、そこに隠ぺい或いは隔離する特殊空間の存在である。」

特殊空間として、住宅以外の住まい「寮」「ヤド」「シセツ」があったが、最近では24時間営業のファミレスやファストフード、個室ビデオ店、ネットカフェなどの「ミセ」が大きな役割を果たしているという。中心と排除された周縁が同じ社会空間で過ごしている。だから軋轢も生じる。

子供の遊び仲間でも職場関係でもそうだが、一人も排除しない空気が、全体に大きな安心感を生むものだと思う。それは社会という大きな単位でも同じことだろう。どうやら本人のやる気の問題とか、貧しくてそうなったという単純な問題ではない。実態と原因をつかんで、構造的に解決していくことが重要なわけで、こうした社会的排除研究は、格差社会の傾向が強まるこれから一層重要になっていくと思った。

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このページは、daiyaが2009年12月 3日 23:59に書いたブログ記事です。

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