雌と雄のある世界
分子細胞生物学、分子遺伝学、発生生物学の最先端で、生物の生殖について解明されてきたことが、一般向けに整理されている。
「雌と雄のある生物では二種類の細胞、体細胞と生殖細胞がある。体細胞はひたすら同じ遺伝情報を分かち合いながら分裂増殖し、生殖細胞は遺伝情報の多様性をつくり出す。」という基本原則がある。
実は雌だけでもどうにかなるそうで、クローン技術を使えば雄がいなくても子供をつくることができてしまう。細胞が増えるというレベルではふたつの性は不要なのだ。しかも男性を決定するY染色体は、かなりの速さで衰えていて、これから10万年から20万年後には消えてしまう可能性があるらしい。
プラナリアという面白い生き物の特異な生殖が紹介されている。この生物は温度によって有性生殖と無性生殖を切り替える。餌によっても切り替わる。栄養条件がよいときは無性生殖でどんどん増え、栄養状態が悪くなると有性生殖で多様性のある個体を増やして、生き残る率を高める。
無性生殖のプラナリア個体に、有性生殖の個体を食べさせると有性化する。獲得形質が遺伝している例と見なす説もあるようだ。プラナリアはいわゆる下等生物なわけだけれど、こういうフレキシブルな性に人間も進化していくこともあるのかもしれない。男女がいつでも入れ替われるなら、かなり生き方も変わるだろうな。
結局、生物の世界で雄と雌の二つの性があるのは、その方がゲノムの多様性が生じやすく、進化の速度がより大きいということに尽きるようである。どのような経緯でそうなったのかはまだ解明されていない。多様性ということであれば200くらいの性があってもよかった気もするが。同じゲームをしている人同士がNintendoDSの"すれ違い通信"の如くちゃんとすれ違える確率みたいなものが影響しているのかもしれない。
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