人は勘定より感情で決める
今年は行動経済学の本が大流行した。人間の不合理性を明らかにするものが多くてどれも興味深い。しかし多くは学者が書いたものだから、読んだあと仕事にどう活かす?が問題だった。その点、この本は日産の現役マーケターが書いている。行動経済学の諸理論を、実際のビジネスシーンにどう応用するか、実践のヒントが多数示されている。学者の本とは一線を画する実用指向が特徴。
たとえばメールの書き方。同じ事実を伝えるにしても、
「調査で4人に3人が選ばなかったことがわかった」
「調査で4人に1人は選んだことがわかった」
前者だとネガティブな印象、後者だとポジティブな印象になる。物は言いようである。人間の心理バイアスをうまく利用して、交渉を有利に進めたり、対立をうまないですます方法が、数十個の理論に基づいて、提案されている。オークションで同じものをより高く売る説明文の書き方(しかも詐欺的でない)なんてノウハウまで。
諸理論というのは、データの一貫性幻想、コントロール幻想、平均回帰、少数の法則、プロスペクト理論、損失回避性、参照点依存性、感応度逓減性、反転効果、フレーミング効果、属性フレーミング、ゴールフレーミング、リスク選択フレーミング、メンタルアカウンティング、利用可能ヒューリスティック、代表制ヒューリスティック、連言錯誤、アンカリングなどなど。
「それはこういったほうがいいよ、こういう理論があるから」という風に実践で使えば、なんだか賢そうである。(深く突っ込まれたらキビシイが)。営業交渉、宣伝広報などの現場で働くビジネスパースンが、行動経済学から学べるヒントを、手っ取り早く把握したいという人によさそうだ。
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