読書術
読書というテーマ、10月27日の毎日新聞朝刊で、学校図書調査へのコメンテーターとして、私は写真入りのインタビュー記事を掲載していただきました。Webでもテキストだけ公開されています。
特集:第55回学校読書調査(その1) ブロガー・橋本大也さんに聞く
http://mainichi.jp/enta/book/news/20091027ddm010040173000c.html
私は基本的に面白いからたくさん読んでいるだけで、面白いと気づいていない若者に本の読み方を敢えて語るというのは難しいものです。それで、読書術についてこの本の紹介です。
文芸評論家、作家、元都立中央図書館長の加藤周一著。1962年初版、半世紀前に書かれた本だが内容はなお古びていない。端坐書見なんてとんでもない、本は寝て読めという著者が、ユーモアをたっぷり交えた文章で、楽しむ読書の極意を教える。
「私は学生のころから、本を持たずに外出することはほとんどなかったし、いまでもありません。いつどんなことでえらい人に「ちょっと待ってくれたまえ」とかなんとかいわれ、一時間待たせられることにならないともかぎりません。そういうときにいくら相手が偉い人でも、こちらに備えがなければいらいらしてきます。ところが懐から一巻の森鴎外(1862-1922)をとり出して読みだば、私ぼこれから会う人がたいていの偉い人でも、鴎外ほどではないのが普通です。待たせられるのが残念などころか、かえってその人が現われて、鴎外の語るところを中断されるのが残念なくらいになってきます。」
待たされる時間をポジティブな気持ちで読書時間にあてることで得した感じを味わう。この読書術には、本を必死になって読む、勉強のために読む、能力開発のために読むなんてシーンはほとんど登場しない。
このほか、いくつかのタイプ別の攻略法がある。
おそく読む「精読術」
はやく読む「速読術」
本を読まない「読書術」
外国語の本を読む「解読術」
新聞・雑誌を読む「看破術」 聖書(真理)と雑誌(事実)
むずかしい本を読む「読破術」
最後の「むずかしい本」というのは、難解さの攻略法ではなくて、むずかしい本なんて読むなという話である。むずかしく感じられる本というのは、著者自身が内容を十分に理解できていない「悪い本」か、いまの読者にとって「不必要な本」のどちらかなので、わからない本は読まないことが大切なのだよと説く。
読書をする人が減っているそうだが、読書の実利効用を説く方法と同時に、読むこと自体が快楽になる愉しい読書術こそ読書人口増加にはきっと重要である。
・読書論
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/post-932.html
・読書について
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/post-913.html
・読書という体験
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-569.html
読書の歴史―あるいは読者の歴史
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1047.html
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