教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する
「破壊的イノベーション」のクリステンセンが語るエデュケーションのジレンマ。
「途上国が製造業を基盤とする経済を発展させるとき、生徒は科学、数学、工学を学ぶことで、貧困からの脱出を保証する大きな見返りを得ることができる。だが同じく国が安定と繁栄を実現すれば、生徒は自分が楽しいと感じ、自発的動機づけの持てる科目を、より自由に学べるようになる。」
この現象は日本の理系離れの原因でもある。少子化と同じように繁栄する国が抱える宿命にある問題なのだ。かつてのように大勢の生徒に同じ内容を教える一枚岩型授業が国の教育システムとして、効率が高かった時代も終わっている。
「一枚岩型の教授方式が、生徒中心の技術を装備した教室へと移行するにつれて、教師の役割も徐々に変化していく。この移行は容易ではないかもしれないが、得るところも大きいはずだ。教師は来る年も来る年も画一的な授業を行いながらほとんどの時間を過ごす代わりに、生徒の間を回って、一人ひとりが問題を解決する手助けをすることに、今よりずっと多くの時間を費やせるようになる。生徒が自分に最適な学習方式を探す手助けする、学習コーチやチューターに近い役割を果たすようになるのだ。」
なんだか個人的に響いた。学生時代の私は人の話を聞くのが苦手で、授業理解がさっぱりだめだった。集中力が低い子供だったわけではない。いま考えてみると、私は教師の話す内容より、顔や身振りや服装、言葉尻という枝葉にばかり妙に強い興味行ってしまう子供だったのだと思う。視線が生徒から先生へ一方向だとそうなりやすい。マンツーマン型だったらだいぶ違っていたかも知れないなあ。
そして未来の教育は「生徒の習熟度に関するリアルタイム・データを利用しながら、学習を通じて生徒を導き、やる気にさせる。」という。そして、破壊的イノベーションにつながる教育の手法改良として、
・一人ずつ異なるプロセス、異なる進度で学ぶ
・コンピュータを利用した教育(最初のうちは効果が出ないがやがて強力になる)
などが有力であると結論されている。習熟度とリアルタイムデータ。それって公文式とかsmart.fmみたいなものだろうか。究極的には、褒める、叱るところだけ人間で、あとは全部がコンピュータという教育システムになるのかもしれないなあ。教育の破壊的進化という重要だがあまり議論されないテーマについて、じっくりと考えさせられる本だ。
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