ビートルズから始まるロック名盤
私は60~70年代のロックが大好きだ。この本は1964年の『ミート・ザ・ビートルズ』から1969年の『アビー・ロード』までの5年間の中から、ロックの名盤50枚を選び、録音または発売順で並べた評論集。ロックがもっともおいしかった時代の濃縮ダイジェスト。
「事はそう単純なものではないかもしれないが、アメリカで生まれた「ロックンロール」が「ブルース」をたっぷり含んでイギリスに漂着、やがて「ブリティッシュ・ロック/ブルース」となり、それがビートルズによってアメリカに輸出されたことによって「ロック」が生まれたと規定するなら『ミート・ザ・ビートルズ』こそその幕を切って落としたアルバムといっていいだろう。」
ビートルズ『ミート・ザ・ビートルズ』
ビーチ・ボーイズ『オール・サマー・ロング』
デイヴ・クラーク・ファイヴ『ザ・ヒッツ』
アニマルズ『シングル・EP・コレクション』
ヤードバーズ『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』
ボブ・ディラン『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』
ベンチャーズ『ベンチャーズ・イン・ジャパン』
バーズ『ミスター・タンブリン・マン』
ポール・バターフィールド・ブルース・バンド『ポール・バターフィールド・ブルース・バンド』
ラヴィン・スプーンフル『魔法を信じるかい?』
ほか。
ロックファンにはおなじみの定番ラインナップの中に、著者の趣味が隠し味的に混入する。初心者はガイドブック情報として受け取り、マニアは趣味の部分を議論のネタづくりのために読むことができる。
個人的には音楽評論の文章術研究資料としても参考になった。対象への想い、熱さをどう表現するのか。アーティストが好きです、愛してますと書いたって伝わるわけがない。たとえばボブ・ディランの『追憶のハイウェイ61』のイントロを語る部分。
「いってみれば「たんなるスネア・ドラムの一打にすぎない、しかしその一打は、時代に投げかける大きな疑問符のように聴こえることもあれば、歓喜の感嘆符として響くこともある。このディランのセッションが初のロック担当となったエンジニア、ロイ・ハリーが施したエコーも絶大な効果を上げている。さらにこの一打は、時代に打たれた句読点でもあり、その瞬間、時代は半ば強引に改行を余儀なくされたように思う。」」
イントロのスネアドラム一打でこれだけ語れる。蘊蓄やデータも提示しながら。個人的にはここで紹介されるアルバムの大半は保有しているか、聴いたことがあるものだったが、紹介文の視点がいいので、楽しみながら読めた。
ちなみにこの文庫本を買ったのは池袋駅のホームだった。文庫本の自動販売機という珍しいものを発見して、ついつい何か買ってみたくなったのが購入動機。ちょうどこの本は、1アルバムを数ページで語るので、電車でちょっとずつ読むのにも向いていたなあ。
朝日新聞では2007年に記事になっていた。
・本の自動販売機、キオスクで人気 首都圏JR5駅
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200712190101.html
「人気があるのは女性向けの軽めのエッセー。自販機では女性の利用者が多くなり、20~30代が中心という。恵比寿駅なら月に450冊、約20万円と予想以上の売り上げ。 」
池袋駅の写真。もっと増えると良いなあ。
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