佐野実のラーメン革命― 麺は男、スープは女
裸の少年のラーメン紹介コーナーの書籍化。佐野実が厳選した「今食べるべき」ラーメン店を解説する。"佐野JAPAN"座談会と、"ラーメンの神"山岸一雄氏(大勝軒会長)との対談も収録。この番組が発掘した店も多いらしい。
佐野実というのは、私の地元藤沢に最初の店を開いた人ということで、昔から注目しているのだが、正統派のあっさりしょう油ラーメンをつくらせると感動的にうまい。目新しいだけの新具材だとか、こってり系の味噌でごまかすなんてことを絶対にしない人である。この本でもやはりクラシックなこだわりのラーメン店を紹介していく。
中華そば屋伊藤(王子)
六厘舎(大崎)
麺処くるり(市ヶ谷)
きら星(武蔵境)
町田汁場 しおらーめん 進化(町田)
などなど。首都圏中心の30店舗。一般的な百科事典的ガイドブックと違って、ひとつの視点と価値基準で店を厳選しているから、行ってみたい店ばかり見つかった。
収録されている対談ではちゃぶ屋(この店も相当うまい)の森住康二が経営者としての感慨を率直に述べているところが印象的だった。新世代の売れっ子なのに厳しい認識。
「森住
経営者と職人の違いって、身を削れるかどうかですね。経営者って、やっぱり身を削るんです。社員に給料を払うために自分はとれない時が必ずあるし、個人保証とか、重いものを背負っていかなきゃいけない。身を削るというのは経験しないとわからない。今月の支払いがたりなくても顔に出さない。その積み重ねでね、現場に立つ人間とは違う所で交感神経を使うようになる。命がけですから、ホント。しかも自分の命だけじゃないから。リスクは大きいですよ。博打とか、そんな生やさしいものじゃない。」
これに対して巨匠 大勝軒山岸氏は、修行期間に対して柔軟な考え方をみせていて、意外である。勘のよい人をいかに見つけて育てるか、ということらしい。
「佐野
昔は10年だったけど、今は1年で店ができますね。
山岸
私は3ヶ月でものになる人はなると思っている。軽々しく出展させるなと文句を言われたこともあるけどね。3年、5年とやらせなきゃ本当はだめなんだけど、本人が一番燃えているときに「来い、教えてやるぞ」と言ってすぐ来させる。その短期間でぱぱっと教えて、「人生の試練に打ち勝て」と書いた色紙を持たせて送り出しちゃうわけ。」
佐野実の支那そばや本店は戸塚にあるそうで、この連休にでも食べに行く予定。この本は予習なのでした。
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