猛スピードで母は
異才 長嶋有、第126回芥川賞受賞作「猛スピードで母は」と文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」の2作品を収録。どちらもかっこいい女がでてくる話。猛スピードでは再婚をほのめかす母であり、サイドカーでは母が出て行った家にやってきた父親の若い愛人である。
男に依存するのか、男を利用するのか。"いい女"というのは男から見た評価なわけだが、"かっこいい女"というのは年下の少年から見た評価である。本来は母親の再婚も、父親の愛人も自分の生活に関わる深刻な問題のはずなのだけれど、どこか距離がある。男を利用しながら颯爽と生きる女が少年の目にかっこよく見える。
両作品ともかっこいい女が、内面的に男に依存している部分も垣間見せるのが上手い。切ないのだ。男と女の関係は子供には意図的に隠されている。隠された立場からちらちら見える大人の事情という構図だからこそ、かっこよさと切なさの両方が成立したのだと思う。同じ物語を大人の当事者視点で書いたらぜんぜん違う話になっているだろう。
ところで「猛スピードで母は」「サイドカーに犬」はインパクトがある題名なわけだが、後に著者は題名を論ずる本も書いている。
・ぐっとくる題名
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004762.html
「やぶから棒ですまないが『ゲゲゲの鬼太郎』のゲゲゲとはなにかを、説明できる人はいるだろうか。」。
・長嶋有 公式サイト
http://www.n-yu.com/
「芥川賞作家・長嶋有の同名小説を竹内結子主演で映画化。80年代初頭を背景に、小学4年生の少女・薫と、自転車に乗って突然やって来た父親の愛人・ヨーコが過ごす刺激的なひと夏をノスタルジックに綴る。古田新太ほか個性派俳優の共演も見どころ。」
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 猛スピードで母は
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2612