ぼっけえ、きょうてえ
ぼっけえ、きょうてえは岡山地方の方言で「とても、怖い」の意。山本周五郎賞、日本ホラー小説大賞受賞作。短編が4つ。土俗の風習や言葉遣いが、得体の知れなさ、情念のこもり具合を強調していて、表題通り、とても、怖い。
『ぼっけえ、きょうてえ』
顔の片側がつり上がった醜い女郎が、一夜を過ごす客に語った、陰惨な身の上話。「確かに妾は目や鼻が、左のこめかみに向けて吊り上っとるよな。醜女とからかうお客だけじゃのうて、怯えるお客も結構おりますわ。目に見えん手が、こうして妾を左側から吊り上げとるみてえじゃとな。」
『密告函』
「岡山県下にては虎列刺病(コレラ)蔓延につき××役場裏に密告函なるものを設けたり。近隣に疑似患者及び隠蔽患者あらばその名を投函すべし。尚この密告函は錠前付にて投函せし者も匿名にてよしとすなり。伝染病予防の為これを大いに奨励せんと決したり。 昭和三十四年六月一日 和気××村役場」。その密告函担当の役人が味わう恐怖。
『あまぞわい』
嫁いだ漁村になじめない女が、身体の不自由な網元の息子と浮気する。あまぞわいで。「この島でええ死に方をせんかった者はあそこに居着くと伝えられとるけん。そいでも、祀りはせん。なんでて、ほれ、満潮にゃあ沈んでしまうんじゃろ。お供えしてもみな流されるんじゃけぇ、祀っても何にもならんがな。」
『依って件の如し』
件(くだん)は牛の妖怪のこと。「シズは牛とともに寝起きし、時には牛の餌とまったく同じ稗も食わされた。」。貧しい小作の家で家畜のように酷使される孤児の少女と兄。かつて兄弟の母親は、村中に忌み嫌われる死に方をしていた。
なお表題作は映画化されている。
「古今東西のホラー映画の巨匠監督13人が集結した「マスターズ・オブ・ホラー」BOXの人気作が単品で登場!巨匠・三池崇史が岩井志麻子のホラー小説を全編英語で映画化。アメリカ人の文筆家・クリスは小桃という女を探して浮島の遊郭を訪れる。彼がそこで出会った不思議な女郎は「小桃は自殺した」と言い、その経緯を語り始める。それは死と生、現実と妄想が交錯する長く恐ろしい夜の始まりだった...。 」
なんだか設定が変わっているような?。これから観る予定。
・瞽女の啼く家
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/09/post-1061.html
・べっぴんじごく
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-843.html
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