瞽女の啼く家
岩井 志麻子の怪奇ホラー。
「哀れな。お前はどんな因果を背負うて、暗闇に生まれてきたんじゃ。こねえに可愛い顔をして、こねえに清い心を持っているのに」
明治時代の岡山。三味線弾きや按摩を生業にしながら、村々をめぐる盲目の女旅芸人、瞽女たちが共同生活を営む屋敷があった。分限者の娘で親が建てた屋敷を取り仕切るすえ、霊感が強く異界の存在を感じ取ってしまうお芳、不美人できつい性格だが行く先に福をもたらすイク。3人の瞽女の立場を入れ替えながら、呪われた村に起きたおぞましい事件の顛末が語られる。
すえの夢に繰り返し現れるようになった「牛女」。生まれつきの全盲なのに目が見えていた古い記憶を持つお芳。すわの生家にみつかったという泥人形。ばらばらの不吉の予兆がやがて一本の線でつながっていき、村の因縁に生じた怪異の正体が曝かれていく。
「後ろになにかおると思わんか」。夜道を一列に歩く瞽女たちの背後に忍び寄る「良うないもの」が彼女たちの後ろから距離を縮めてくる。
土俗因習、エロで、えぐい表現が得意な岩井 志麻子の岡山モノの中でも、本作はかなり完成度の高い作品であると思う。設定上、視覚を封じて音や触覚、気配の描写が多くなったことで、目には見えない物の怪のイメージが鮮烈に立ち上がってくる。もう最後はぐちゃぐちゃのねちゃねちゃですけど。
・べっぴんじごく
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-843.html
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