琵琶法師―"異界"を語る人びと
「最後の琵琶法師」の記録映像のDVD(8cmDVD)が付録についた岩波新書。本文では琵琶法師の歴史的な位置づけ、平家物語の成立の経緯を解説する。映像では語り手の主体が消失し、自己同一的な発話主体を持たず、物語中の登場人物に転移していく"モノ語り"の実演を見ることができる(この映像背景、かなり生活感漂うのだが...本物だからか)。
先日、人工知能学会全国大会で講演するため飛行機で高松に出かけた。機内でこの本を予習読書。イベント翌日に平家物語ファンとして、市内にある平家物語歴史館を訪問してみた。(高松には源平合戦ゆかりの屋島がある)。
・平家物語歴史館
http://www.heike-rekishikan.jp/
かなり大がかりなミュージアムだが、工場地帯の一角にあり観光客には不人気?なのか、私以外のお客さんがいなかった。ここでは蝋人形で平家物語の有名シーンを再現している。もちろん琵琶法師による語りが大音響で場内に流れている、唯一の客である私だけのために!。随分贅沢な気分になったが一人で何百体の蝋人形館を回るのは実は不気味な体験でもあることが判明。人形が結構よくできているので怖いのである。おまけに冷房が効きすぎて寒い。
平家物語が好きな人にはかなり楽しめる博物館なのだが、それ以外の人にはどうなんだろうなあ。なかなか微妙なところだよなあ、前半の四国ゆかりの著名人の蝋人形群が実はビジネスなんだろうなあなどと、と独り言を言いながら「好きなだけどうぞ」と勧められた写真撮影をして展示をゆっくり回る。
琵琶法師の語る世界観にどっぷりと1時間浸ることができた。マニアックなB級スポットとして、なかなか。
それと琵琶法師の平家物語の絵本化としてはこの本も素晴らしかった。子供に平家物語をインストラクションするのに最適である。
琵琶法師が集まってきた聴衆に栄枯盛衰の物語をおどろおどろしく語る。「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす おごれる人も久しからず ただ春の世の夢のごとし たけき者も遂には滅びぬ 偏に風の前の塵に同じ 」を絵本にした。
・「平家物語 あらすじで楽しむ源平の戦い」と「繪本 平家物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-823.html
・安徳天皇漂海記
http://www.ringolab.com/note/daiya/2006/09/post-445.html
平家物語のバリエーション。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 琵琶法師―"異界"を語る人びと
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2559