花まんま
第133回(2005年)直木賞受賞作の表題作を含む朱川 湊人の短編集。昭和30~40年代の大阪の町を舞台に、当時子供だった主人公の不思議体験を綴った郷愁幻想小説集。ファンタジー40%、ノスタルジー60%。
6編中好きなのはこの3編かな。
【花まんま】
ある日、妹が妙に大人びた口を聞くようになった。まるで誰かの生まれ変わりであるように、別の家や家族の記憶を語る。不可思議な記憶の正体をつきとめようとする兄妹の物語。
【トカビの夜】
本当は好きだったのに、仲間と調子を合わせて、いじめていた近所の朝鮮人の少年が死んだ。その夜から近辺の家に不思議な現象が起き始める。やはりあれは少年の幽霊なのだろうか。
【送りん婆】
臨終間近で苦しむ人たちを安らかな気持ちで送り出す呪文を知っているのが「送りん婆」。婆に跡継ぎとして指名されてしまった少女は、見習いとして臨終の現場を一緒に回ることになる。
独特の異世界を確立している。科学的に霊魂の存在があるとかないという議論は不毛だなと思う。愛憎、人情があるところで、人間が死ぬと、残された人たちの心に自然と霊が生まれてくる。
6編とも共通した世界観で描かれていて、どれも根底に暖かい感情があって、続けて読みやすい。昭和の空気がたっぷりだ。こういうのは平成生まれが読むとどう感じるのだろう。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 花まんま
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.ringolab.com/mt/mt-tb.cgi/2557