傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学
驚き。食品包装用ラップで傷が治る?。2001年よりインターネットで傷を消毒しない、乾かさない「湿潤治療」を啓蒙する医師の書いた本。コペルニクス的な転回が面白い。
・新しい創傷医療 「消毒とガーゼ」の撲滅を目指して
http://www.wound-treatment.jp/
1 傷を消毒しない。消毒薬を含む薬剤を治療に使わない。
2 創面(キズ)を乾燥させない
という二つの原則を守るだけで傷(擦り傷、切り傷、火傷など)が驚くほど早く、痛くなく治ってしまうという。そして消毒薬は、傷を治すどころか、人間の細胞膜タンパクまで破壊してしまうから使うべきではないとする。これまでの医療の常識を覆す最新治療法である。
傷が乾いてカサブタができたら治るというのもウソだと教える。
「カサブタは要するに、中にばい菌を閉じ込めて上から蓋をするようなものである。だから、カサブタになるといつまでも治らないし、閉じ込められたばい菌が暴れだせば化膿することになる。」
傷口のジュクジュクは人体細胞の培養液なので浸出液を乾かさない方が傷が治るというのだ。常識に反するやり方だが、非情に多くの多くの治療例や読者の実践によって検証されている。
傷口を水で洗ってから、くっつかず浸出液を外に出さないもので覆えばいいのだが、ほかになければ食品包装用ラップでかまわないらしい。市販のハイドロコロイド被覆剤として「キズパワーパッド」も紹介されている。
市販品があるというのは安心である。早速注文した。
著者は医学の歴史をひもとき、かつて瀉血療法や水銀療法のようなトンデモ治療が医学の常識として行われてきたことを指摘する。そしていまこそ創傷治療のパラダイム転換の必要だと訴えている。
この治療の話が面白いのは、がんや難病の話ではなくて、日常的な擦り傷、切り傷や火傷の治療だということだ。しかも入手困難な薬が要らず、サランラップでまにあう。誰でもほいほいと気軽に試すことができる。そして試した人々からはてきめんの効果があったと報告が集まっている。
・治療をためらうあなたは 案外正しい EBMに学ぶ医者にかかる決断、かからない決断
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/11/-ebm.html
・HEALTH HACKS! ビジネスパーソンのためのサバイバル健康投資術
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/health-hacks.html
・風邪の効用
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/01/32009.html
・快適睡眠のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/10/post-848.html
・運動神経の科学 誰でも足は速くなる
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/09/post-826.html
・呼吸入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/05/post-751.html
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